2016年04月29日

『上流階級 富久丸百貨店外商部』を読んで...

4月19日の記事で書いた『シャーリーホームズと緋色の憂鬱』の作者である高殿円さんの著作をもっと他に読みたいと思い、『上流階級 富久丸百貨店外商部』を図書館で借りて読みました。

上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部 -
上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部 -

舞台はハイカラな町である神戸、そしてかの有名な関西のセレブ地区である芦屋...

架空の老舗百貨店である「富久丸百貨店」の外商部に勤めるOLさんのお話しです...

いやあ、面白いですねぇ...

エネルギッシュでアクティブな若い今どき女性が、縦横無尽に大活躍します...

そして、この作者さんの作家としての力量のすごさ...

Amazonの書評などを見ればわかりますが、第一に、読ませる文章力に表現力...
これらが、まず素晴らしいです...

夢中になって読めます...
時の経過を忘れさせるほどに...

次に、人物設定とその人物の魅力的な描写...

まるで魂が吹き込まれて、実在の人物のように感じてしまいます...

主人公の鮫島静緒ちゃんは、背が高くキツイ顔つきで、恋愛二の次、仕事第一のキャリアウーマンです。

もっとも、高校卒業後は大学へ進学せずにお菓子の専門学校に進み、そこを卒業後は大手を断って郊外にある小さなケーキ屋さんに勤務。

すべて、ポリシーを持って人生設計を行ったゆえの決断と実行力の結果です...

その後、出店交渉をした先の百貨店に引き抜かれて、企画部門でユニークな企画を成功させ、さらには男中心の職場である外商部へと異動になるという、30代半ばまでにすでに激動の人生を歩んできているというのがこの物語が始まる前までの設定です...

しかも、その間、出世頭の百貨店同僚と結婚し、流産し、離婚するというバツイチでもあります。

この物語は、そんな彼女の、仕事上の悪戦苦闘だけでなく、恋愛心理や人生観や心境の変化を巧みに描いています...

高校時代からポリシーと実行力で生きてきた彼女も、はやアラフォー...

これまでの人生をかなり自分のやりたいように生きてきていても、それでも、迷い・後悔・足りない所...
まだまだあるよ、ということなんですね...

女性の作家さんらしく、女心の機微や、今の世情と向き合って日々生きる女性の悩み事がとてもよく描かれているように思えます...

特に、若い仕事を持ってる的な女子におススメの作品ではないかと思います...
なぜなら、参考やヒントになるだろうからです...


例によって、気になった箇所をいくつか引用しますね...

「愛には敬意はないよ」
恨みや快感はあるけれど、と彼女は言った。
その言葉は静緒の中に、ひどく哲学的に響いた。


私ときたら尊敬を愛情だと錯覚して、異性と付き合ったり結婚したりしていたのか。だから長続きせずに飽きられたのか。


「今日ね、店の食品フロアを見てふっと思ったんだ。ケーキとダイヤって似てる気がする」
「そりゃまた、突拍子のないことを」
「はじめは値段の違いとか売り方の違いとか、あまりにも違いすぎるって思ったけど、今はそうは思わないのね。百円のシュークリームも百万のダイヤも、それを欲しいって思うお客さんの気持ちは一緒なんじゃないかなって。じゃあ売るほうも同じ気持ちでいるべきなんじゃないのって」


恋愛や仕事で悩み、そこから何かをつかんでいこうとする主人公静緒の心理がよく描かれていますよね...

また、作者自身の(おそらく)、社会や経済に関する深〜い見解も描かれているような気もします。
例えば、以下のような文章...

みんなが強く望んで、それを手に入れるために努力してもがくようなことが、最近は少なくなっているように静緒は感じていた。お金を貯めて女の子を乗せるために車を買ったり、背伸びしてブランド品を買いにハワイに行ったりするような、長い間百貨店を支えていた”憧れ”が失われてしまっている。


「仕事できて金稼いでる人間がまっとうだということにしとけば、社会ってもんがとりあえずは動くじゃない」
ははあ、と桝家がわかったのかわかってないのか判断つかない顔で息を吐く。
「そりゃそーだ。テレビに出てるやつとか、選挙で勝ったやつとか経済握ってるやつらって基本的にみんな金持ちですからね。そいつらが言う正義なんてとおりいっぺんだよなあ、くそくらえ上流階級!」


たとえ薬局がなくなっても、洋品店や文房具店や書店が経営が苦しくなって消えてしまっても、ケーキ屋だけは生き残るんじゃないか。わざわざ美味しいと訪ねてきてくれる価値が、ケーキ屋には見いだせるんじゃないか。だからいくつもあった有名なパティスリーへの就職を蹴って、ここで店をやるんだよ。
静緒はその、今考えれば若々しいだけで現実感のない君斗の考えに共感した。


いかがでしょうか...

優れた心理描写だけでなく、社会や経済への鋭い視点も併せ持った、能力の高い作家さんですよね...

なお、この作品はテレビ化もされていたみたいです。
↓↓↓
http://www.fujitv.co.jp/jyoryu/

気がつかなかったなぁ...







posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☁| Comment(0) | 分析・考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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