2016年05月13日

志賀櫻氏著『タックス・ヘイブン』を読んで...

今週は、「パナマ文書」関連がニュースを賑わしましたね...

私も影響を受け、勉強のためもあり、岩波新書から出ている『タックス・ヘイブン』という本を読みました。

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書) -
タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書) -


とてもためになりました...

この本が優れているのは、評論家が書いたものではなく、著者が現場の第一線で戦ってきた実務家であることです。

その生々しい現実を踏まえての記述はとても勉強になりますし、語り口も誠実で実直。
奇をてらったところや憶測に基づくところは、ほとんどありません。

著者の志賀櫻氏は東大法学部出身で、大蔵省に入省。

金融監督庁(現・金融庁)が出来たときは、裏で日本経済を支えるような働きをしていたようです。

以下、引用です。

筆者は一九九八年、金融監督庁(現金融庁)創設当時に、同庁に置かれた特定金融情報管理官という職の初代であった。これは日本のマネー・ロンダリング対策のヘッドにあたるポストである。


筆者が傷んだ銀行の国有化という強行着陸シナリオを説明に行くと、当時の小渕恵三総理と野中広務官房長官はあっさりとゴーサインを出してくれた。それによって強襲揚陸作戦に出ることができた。あの二人がただちに迷いもなく決断してくれていなければ、本当に危なかったと思う。筆者は、金融監督庁の特別公的管理班として銀行の国有化の指揮を執って、死に体の金融機関を破綻させて国有化していった。



その後、外務省や警察へも出向し、海外の金融当局と渡り合ったり、
反社会的勢力のマネー・ロンダリング対策にも関わったりという経験豊富な官僚出身者です。

頭脳優秀でエリートのように思えますが、上から目線や自慢を感じさせるような書き方はありません。

それどころか、パレスチナへ行ったときは護衛を断り、車を自分で運転したところ、道を間違えて迷い込み銃撃を受けたり...

アイルランドへ行ったときは、泊まったホテルから引き上げて2日後にそのホテルが爆破されたり...

ペルーへ行ったときには、空港から装甲車に乗り、日本大使公邸に装甲車の扉が開くや否や体ごと飛び込んだり...

コロンビアで勲章を授与されるのに、兵士に半ば強制的に船に乗せられ、海上にある大統領の別荘のある島に連れていかれたり...

すごいアクシデント、というか死線をくぐり抜けてきたこともこの本に書かれています。

なので、経済書というだけでなく、”冒険本”としても楽しめます(笑)。

なお、志賀氏は剣道五段で小火器を扱うこともできるとか...

また、ガチガチの硬派でもなく、ハリーポッターにも通じているらしいですね。

ロンドンのシティに関して、次のようなウンチクを披露してくれています...

シティがどこにあるかは、主要道からの入口にグリフィンという怪獣の像が立っているから、すぐにわかる。余談だが、ハリー・ポッター・シリーズに出てくるグリフィンドール寮のシンボルは金の獅子である。これはフランス語で「黄金のグリフィン」を意味する。グリフィンには重要な二つの役目がある。ひとつはゼウス等の天上の神々の車を引くこと、もうひとつは黄金を発見し、守ることである。シティの入口にグリフィン像があるのは、いかにもふさわしいというべきかもしれない。


このように、お堅い経済本ではなく、楽しく読める本でもあります...


さて、この本のメインテーマのタックスヘイブンですが、イギリス諜報部(MI6)やアメリカCIAも使っているらしいですね。

それで、なかなか根絶やしには出来ないのだとか...

それでも、現在の世界経済が金融市場を振り回すヘッジファンドにかき回されている事実に著者は義憤を感じており、その震源がタックスヘイブンにあると的(まと)を突いているのは、その通りなんでしょう...

なお、タックスヘイブン以外にも国際経済について色々と勉強になることが書かれています。

各脱税事件の解説:フィルム・リース事件、ハリポタ印税事件、武富士事件などなど...

2009年に出来た国際的組織である、”FSB(ファイナンシャル・スタビリティ・ボード)”とは?

銀行の国際的な規制である、バーゼルT,バーゼルU,バーゼルVの各解説...

有名なBIS規制(自己資本比率8%以上)とは、自己資本を確保させて銀行の安全性を向上させようとしているのではなく、預金(銀行にとって負債)を規制し、大銀行が身の丈を超えて貸出しできないようにして、破綻するのを未然に防ぐためのものだそう...

以下、引用です。

バーゼル自己資本規制はそもそもレバレッジの規制である。自己資本規制があると、自己資本の量の何倍かまでしか借入れ(商業銀行の場合は預金)ができない。そうするとバランスシートの総額が頭打ちになり、銀行の貸出規模も制限される。こうすることによって、大きすぎて潰せないという大きな問題点にも縛りがかかることになる。


大銀行が破綻しそうになると、大きすぎて潰せないから、どうしても公的資金の注入ということになります。

なので、それを未然に防ぐための規制なのだとか...
腑に落ちました...


これまでテレビやネットのニュースやビジネス雑誌などで、いまいちわかっていなかったこれらのトピックの踏み込んだ理解が出来ました。

読んで非常に良かったなと感じた本でした。





P.S.
上記の記事とは全然関係ないことですが、
サッカー日本男子代表U-23で水曜日にゴールを決めた富樫敬真選手は、両親が「ケイマン諸島」に旅行したときの子供だから、名前が「ケイマン」になったそうですね...



posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 投資情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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