2016年06月19日

『マネーの進化史』を読んで...(前編)

ニーアル・ファーガソン著『マネーの進化史』を読みました。

5月26日,27日の記事に買いた『文明 西洋が覇権をとれた6つの真因』の著者の方です...

イギリス出身の経済学者で歴史学者...

今回は、古代メソポタミアから現代までのマネーの歴史が記述されています。

読み物としても面白いし、金融や経済の勉強にもなります。

我々日本人の学校での歴史の勉強や、日本語の歴史書や経済書には出てこない情報もたくさん載っています。

マネーの進化史 -
マネーの進化史 -

文庫本もあるようです...
マネーの進化史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) -
マネーの進化史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) -


例によっていくつか引用してみましょう...

ワーテルローの戦いは、二〇年にわたってフランスとイギリスの間で断続的に続けられた衝突の天王山だった。だがそれは両国の軍事対決であるとともに、対立する二つの金融システムの覇権争いでもあった。つまりフランス・ナポレオン治下で略奪(被征服者に対する課税)に基盤を置くシステムと、イギリス側の負債に基づくシステムの対峙だ。


ナポレオンV.S.大英帝国の戦いは、政治面というよりは金融・経済面での世界史の分岐点だったようです。

フランスの統治体制は、支配下地域から直接税金を吸い上げるシステム。
一方のイギリスの統治体制は、債券をまず発行させ(=借用証書を作らせ)、利子と元本の返済義務を負わせるシステムでした...

そして現在に至るまで、この「勝者イギリスのシステム」が世界の金融の主流になってきたのだな、と気づきました。

すなわち、国には国債、個人には住宅ローン、会社には社債と銀行からの借入金...

今や、様々な経済主体が借金を負うようなシステム(仕組み)に世の中はなっているかと思いますが、ここが起源だったのだな、と...

で、どこの誰がこういう仕組みを作ったのかというと...

ワーテルローの戦いのあと、ロスチャイルド一族は半世紀もの長期にわたって、国際金融市場を支配した。


一八一五年以降のロンドン債券市場で特筆すべき点は、ロスチャイルドが新しい借り手のほとんどに、それぞれの通貨ではなく、スターリングと名づけられた新しいポンド通貨建てで債券を発行させ、利子の支払いをロンドン、あるいはロスチャイルドが支店を持つヨーロッパのいずれかの市場でおこなうように要求したところにある。


ロスチャイルド一族が確立したこの世界金融システムは、世界を席巻します...

グローバリゼーションは決して新しい現象だとは言えない。第一次世界大戦が始まる一九一四年までの三〇年間に、世界全体の生産高に貿易が占めた比率は、現在までの三〇年のそれに匹敵する。


国際投資にかかわる人びとにとって、一九一四年までの三〇年間は文字どおり黄金時代だった。


ロンドン株式市場は、五七もの政府や植民地政府が発行した債券を取り扱っていた。


例えば日本も、日露戦争の戦費はロンドンの金融市場で発行した日本国債によっています。
(ロンドン金融市場とロスチャイルド家がいなかったら、日露戦争は勝てなかったんです)

ロンドンは言うまでもなく、大英帝国の心臓部...

そして、”七つの海を支配する”と言われたこの帝国の支配体制といえば...

外国の貿易相手が債務不履行を決め込んでしまえば、地球の裏側にいる投資家には、ほとんど打つ手がなかった。第一次グローバリゼーションの時期には、このような事態に対して恐ろしいほどシンプルで効果的な手を打った。ヨーロッパのルールを押し付けたのだった。


借り手が植民地である場合、債務契約は当然ながら独立国家との契約に比べて、いざというときに強制執行に訴えやすい。


外国の政府が乱暴な行動を取ったときには自国の政府が砲艦を送り込んで救ってくれる、と投資家たちが頼れる時代...


大英帝国の砲艦外交の裏側がよくわかります...
おとなしくカネを返せばよし、返さない場合は武力で制圧(特に相手が弱い場合)...

大英帝国が”海賊資本主義”と揶揄されたのもうなづけます...

しかし、そんな国際金融の仕組みも第一次世界大戦勃発であっという間にお陀仏となります...

本格的なヨーロッパ戦争が始まるかもしれない、と遅ればせながら気づいたときには、流動性などというものは、風呂の底が抜けたように世界経済から消えていた。


もろに波を受けたのが、ロンドンの商業手形仲買業者だ。その多くは、ヨーロッパ大陸の取引先にかなりの金額を貸していたが、相手方が送金できなくなったか、あるいは送金する気をなくしたためだ。彼らが苦境に陥ったため、次には手形引受商社(一級の商業銀行)に衝撃が及んだ。彼らは商業手形を引き受けていたわけだから、外国人が債務不履行に陥れば、真っ先に影響を受ける。


第一次金融グローバリゼーションは、達成するまでに少なくとも一世代かかった。だが崩壊に要した時間はほんの数日。


我々日本人は第二次世界大戦が大転換だという認識ですが、金融史的には第一次世界大戦が大転換点...

著者はワーテルローの戦い〜第一次世界大戦までを、”第一次金融グローバリゼーション”の時代と呼んでいます。

そして、両大戦間の混乱期をへて第二次世界大戦後のIMF体制へ移り、20世紀末でふたたび国際化の流れが激しくなり、以後現在までが”第二次の金融グローバリゼーション”の時代と見るわけです...

・・・

これ以外にも古代メソポタミアで金貸し業がすでにあったこと、中世イタリアのメディチ家の物語、寡婦救済や海上保険から始まる保険の歴史、などが語られています...

広範な知識で表(おもて)の歴史の裏側にあるマネーの歴史の存在とその重要性をあぶり出す著者...

そんな著者が総論として言いたいことは、”マネー”というものは、人類の幸不幸に対して、悪くても中立、普通に見ても「貢献してきた」ということです。

金融市場は人間を映す鏡であり、私たちが自分自身や自分たちを取り巻く資源の価値をどのように評価しているかをつねに示している。人類の欠点が、美徳と同じようにあからさまに映ったとしても、それは鏡のせいではない。


カネが世界を回しているわけではない。実際に回っているのは、おびただしい数の人間であり、物資であり、サービスだ。


銀行、債券市場、株式市場、保険や不動産の所有―をすべて組み込んだ経済は、それらがなかった時代の経済形態より長期的にはうまく機能するようになった。金融を扱う機関を通せば、封建制度や計画経済に比べて資源を有効に活用できるからだ。


人類が進歩する裏側にはマネーの進化という原動力があった。自給自足型の農業という単調でつらい仕事や、マルサスの人口論が示すみじめな状況から解放されるためには、人類には科学の進歩や法の普及と同じくらい、金融の技術革新や仲介業務や統合などの複雑なプロセスが不可欠だった。


金融システムが進歩したおかげで、庶民の暮らしは「みじめなどん底生活」から、多くの人たちは現在のようにキラキラ輝く「豊かな物質文明」を満喫できるようになった。


ひと言、ひと言が身に沁みますね...

マネーは用い方によって毒にも薬にもなるとか、あるいは道具に過ぎないとか言われますが、まさにその通りで、マネーが悪に働く場合は、結局その原因は”人”だということです。

そして、マネー自体は人類に貢献してきたのだというわけです...


長くなったので続きは明日にしたいと思います...







posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☔| Comment(0) | 投資情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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