2016年11月13日

『シャープ崩壊』を読んで...

日本経済新聞出版社発行で日本経済新聞社編の『シャープ崩壊』を図書館で借りて読みました...

シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か -
シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か -

”シャープ”という戦後日本のモノづくりを支えてきたメーカーの一角が落ちてゆく姿が赤裸々に描かれています...

結構、具体的な踏み込んだ記事になっており、読み応えもあります...

内容的には、「社内での権力闘争が経営方針をはっきりさせずシャープを迷走させるとともに、複数並び立った権力者個々の巨額の設備投資合戦に導いた...」

「その結果、リスクが高まり、やがてその恐れは現実のものとなった...」というのがこの本のメインのストーリーです...

すなわち、20世紀末からの断続的な経済危機によって、長期の部材調達計画の見通しが狂うと同時に売上急減に何度も見舞われることで予定したキャッシュフローが実現しなかった期間が長続きした...

くわしく言うと、シャープは、液晶を作る工場をはじめ、大きな設備投資を行いました...

そして、大きな設備投資には巨額の資金が必要...

企業の資金というものは自己資金と借り入れ金から成りますが、その両方が徐々に減っていった...

その理由は、第一に、断続的な不景気で予測した売り上げが実現できなかったこと。

次に、長期の部材調達計画に伴う部材メーカーとの購買契約により、不況下における資源価格暴落の際には割高で仕入れることになってしまって他社よりも割高な製品原価となり、価格競争力の激しい製品を取り扱っているため、値引き競争の中で必要なマージンが確保できず、さらにキャッシュインフローが落ちる原因になった...

結局、入ってくるお金が予想よりも減り、出ていくお金が他社よりもたくさん...

この状態が長続きしてしまう...

経済にとってマネーは血液だと言われますが、むろん、企業にとっても同様。

シャープという、巨大企業とは言えない準大手的な規模の企業にとって、出血多量の状態が長期に渡ったというわけです...

その状況が、シャープという組織の企業体力を弱らせていった...

以上が、この本から読み取ったシャープの経営危機の原因の解き明かしです...


が、わたし的には、もう一歩踏み込んで分析したい...

確かに、シャープの生産設備への投資は、身の丈にあってなかったかもしれない...

しかし、安定した経済環境下では人口増と右肩上がりの経済成長が期待されますから、”大きな設備投資”は冒険ではあるが、暴挙ではないはず..

現に、冒険的な設備投資によって大きく成長してきたのが戦後の日本の大企業群です。

それが、20世紀末から風向きは変わり、日本企業の大胆な経営施策はことごとく失敗してきた...

少子高齢化による成長の鈍化、不良債権に苦しんだ銀行の貸し渋り、為替相場の急変動による断続的な円高不況がトリプルパンチになったといわれます...

しかし、世界にはインドのように人口増と順調な経済成長をしている国がありますし、金融市場の発達により、海外からの資金借り入れや為替相場の変動に対してヘッジ手段が使えるようになってもいます。

知恵と工夫次第では、うまく出来る余地はあるのではなかったか...

そう思うわけです...

ただし、メーカーという企業形態にとっては、この四半世紀はやはり苦難の時代だったとも言えると思います。

なぜなら、メーカーにとって設備投資や研究開発投資は必須のもの...

しかし、その効果が実現するには長い時間が必要です...

けれども、世界経済の、とりわけ世界金融市場のボラティリティの大きさは、企業の中長期の経営計画の実現を待ってはくれません...

コンピューターと通信インフラの発達は、同時に、資金の逃げ足の速さをも作ってしまった...

それが、経済の血液といえるマネーの流れをときに暴走させ、実体経済までも巻き込んだ...

結局、20世紀末以降、シャープにしろ、他のうまくいっていないメーカーにしろ、世界経済の短期的な変動が大きすぎ、それに翻弄されたことが、日本のモノづくり産業が衰退した真因ではないかと考えます。







posted by スイス鉄道のように at 09:00| 東京 ☀| Comment(0) | 分析・考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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