この有名なシリーズを私は今まで読んだことがありませんでしたが、今回、『メグレと老外交官の死』を図書館で借りて読みました。

メグレと老外交官の死 (1980年) (メグレ警視シリーズ) -
その感想をば...
あらすじは、引退した外交官が四発の銃弾で撃たれて死んでいるのが発見され、外務省経由でメグレ警視に捜査が依頼されるところから始まります...
最初の一発で即死であるにもかかわらず、さらに三発が撃ち込まれているのが謎めいています。
容疑者は、同居している家政婦,唯一の相続人である甥,かつての恋人とその子供など...
最後には意外な結末が待ち構えています...
長編に分類されますが、英米の重厚な推理小説とは違ってそんなに長くもなく、また濃くもなく...
さらっと読めました。
以下、訳者あとがきからの引用です...
メグレ物は原稿枚数にして三百枚前後である。無駄なことを書いているスペースがない。あっという間に読者を夢中にさせ、最後まで引っぱっていかなければならない。一行たりとも無駄なことは書けないのだ。
メグレ物の書出しはずば抜けてうまい。読みはじめると、すぐにメグレの世界に引きずりこまれてしまう。
その書き出しは、こんな感じです。
その年の五月には輝きと、風情と、幼年時代の思い出の匂いがあった。人の生涯に二度か三度しかないような例外的な五月。メグレはそういった五月を《頌歌の五月》と呼んでいた。
たしかに...
また、パリの美しい風景や街角の描写や、捜査の合い間に美食を楽しむメグレ警視の捜査スタイルにも癒されました。
以下、気に留まった箇所を引用です。
メグレは司法警察局の局長と一時間過すと、ビヤホール《ドフィーヌ》に行って、カウンターで生ビールを大ジョッキで二杯飲んだ。
捜査の途中で、ビヤホールに寄り道して一杯ひっかけるメグレ警視...
また、取り調べ中も...
片手にパイプ、片手にハム・サンドを持って、メグレは恨みを晴らすかのように歩き回りながら食べた。ときどき立ち止まると、ビールを一口ぐうっと飲んだ。
古き良き時代の、それもフランスだから成りたつんでしょうね。
今なら問題視されてしまいそう...
でも、そんな緩い雰囲気がたまらなくいい...
ハマりそうな予感が...
なお、事件の解決の仕方につき、訳者はこう言っていますが...
おそらくこの殺人事件の謎は、読者には最後までわからないだろう。犯人がわかったとき、読者はこの解決のしかたは、ミステリのタブーにふれていると思うかもしれない。
しかし、私は、解決のヒントは各所に散りばめられているなぁと思いました。
以下、ヒントとなっていると思われる箇所です...
まずは、書き出しのところで...
...メグレはそういった五月を《頌歌の五月》と呼んでいた。それというのもメグレに、最初の聖体拝領と、すべてが新しく、素晴らしかったパリでの最初の春を思い出させてくれるからである。
とあります。
そして...
黒檀の大きな十字架が、つげの小枝が入っている聖水盤の上に掛かっている。
「サン=ティレール伯爵は熱心な信者なのですか?」
「日曜日のミサを一度も欠かしたことがございません。ロシアにいたときも。」
「公爵夫人は熱烈なカトリック教徒なのですか?」
「彼女はヴァレンヌ通りの大邸宅のなかに礼拝堂を建てさせました。」
「それで、夫のほうは?」
「おなじくカトリック教徒です。」
《わたくしは一晩じゅうお祈りしました。つぎの朝、教会に司祭を訪ねました……》
司祭は公爵と同意見だ。愛の問題のために、五世紀前からフランス史のあらゆる頁に登場してくる名前を絶えさせてはいけないというのである。
キリスト教、それもカトリックに関する記述が頻繁に出てきます。
被害者も、容疑者も、熱心な信者だったという...
これらの記述がヒントになっていると思うんですが...
どうでしょうか?
おわかりになった方はいらっしゃいますでしょうか...
了