2019年04月28日

金子夏樹著『リベラルを潰せ』の感想...

金子夏樹氏の著作『リベラルを潰せ』を読みました。

内容としては、世界的にリベラル勢力が後退しているという情勢の紹介と、その原因を究明するものでした。

リベラルを潰せ 〜世界を覆う保守ネットワークの正体 (新潮新書)
リベラルを潰せ 〜世界を覆う保守ネットワークの正体 (新潮新書)

著者は、大学(筑波大学)を出て日経新聞社に入社し、モスクワ駐在員経験のある方です。

結局、そのときの見聞に影響され、プーチンをめぐる政治情勢に触発されたことがきっかけでこの著書の発行に至っているようです。

著者自身はおそらくリベラル寄りの思想を持つ人のようで、本のタイトルがそのことを示唆していましたし、内容的にもそちらの傾向が出ておりました(著者自身は中立だと言ってますし、できるだけそう書こうという努力は感じられましたが)。

以下、現在の国際情勢の参考になる箇所を中心に引用してみたいと思います。

トランプ政権の岩盤支持層となっているのが、プーチンを称えた福音派=キリスト教右派だ。


本書のテーマはプーチンとトランプを底流で結ぶ、この「反リベラル」という思想だ。


ブキャナンは「21世紀は伝統・保守主義と急進的な多文化・リベラル主義が対立の軸となるかもしれない」と予測する。


リベラルの前提となるのは、「社会は進歩を続ける」という価値観だ。一方、保守主義は伝統や常識、慣習などを重んじる考え方を指す。合理主義が良い社会をもたらすというリベラル思想を疑い、「人間は常に間違える可能性がある」と考える。保守派の原点にあるのは、自由や平等を求めたフランス革命が、結果として独裁者による恐怖政治に陥ったトラウマ体験だ。


キリスト教右派の重鎮、パトリック・ブキャナンはその著書『超大国の自殺』で、欧米で進むリベラル主義と世俗主義(=脱宗教)が社会の分断を招くと警鐘を鳴らした。


世界家族会議は日本ではなじみが薄いが、世界各地で穏然たる影響力を持つNGOでもある。「伝統的な家族観を守る」という主張を掲げ、その賛同者は世界に広がっている。米国のジョージ・ブッシュ(子)大統領はこの団体にあてたメッセージで、「あなた方の努力は世界をより良くしています」と称賛している。ロシアを含めて保守的な価値観をともにする世界各国の政府と緊密に連携し、総会では開催国の政府トップが参加することも多い。


「法曹の軍隊」と呼ばれ、リベラル派から警戒されるNGOがある。「自由を守る同盟(ADF)」というNGOで、保守的な価値観を持つ弁護士が所属する法律の専門部隊だ。……(中略)…… 彼らには「11ヵ条の信仰声明」という文書がある。「聖書に誤りはなく、厳然たる神の言葉と信じる」という声明から始まり、男女間以外の非伝統的な性行為を「モラルに反し、神に対する冒瀆行為であると信じる」という一文もある。この声明を支持した者のみが、キリスト教を守る弁護士として登録されるのがこの団体の特徴だ。


「自由を守る同盟」は1993年に米南部アリゾナ州で設立され、米国内で保守的な視点から数多くの裁判に取り組んできた。活動の資金となる寄付金は年間で500万ドルに達し、弁護士を教育するプログラムを展開するなど保守派若手の養成機関の役割も担っている。追い風となったのが、トランプ政権の誕生だ。政権の発足と軌を一にして、社会への影響力を増している。トランプ政権が彼らと関係の深い弁護士を重用し、連邦裁判所の判事として少なくとも4人を任命しているためだ。


ロシアなど反リベラル思想を持つ国々は2015年、国連本部がある米ニューヨークで伝統的な家族観を守るため連合組織「グループ・オブ・フレンズ・オブ・ザ・ファミリー(GoFF)」を設立した。その主張はナチュラルファミリーを社会の基本とみなすもので、世界家族会議など福音派の主張を国連で展開する別動隊といえる。


代表的な保守派の経済人に、2015年まで10年にわたり国営ロシア鉄道の社長を務めたウラジミール・ヤクーニンがいる。ロシア鉄道は100万人を超える社員を抱え、国家の中のミニ国家とすら言われる巨大組織だ。元外交官のヤクーニンは、プーチンの側近の1人として知られる。


ソ連があっけなく自壊した1991年以降、新生ロシアを席巻したのは欧米のリベラル思想だった。欧米の経済専門家とロシアのリベラル政治家が主導した急進的な市場改革は、ロシア経済に大混乱を引き起こす。……(中略)…… 国民の富は掠奪され、貧しいながらも安定していた生活を失った。多くの一般市民には「欧米にだまされた」という苦い思い出が残ることとなる。自らのアイデンティティを見失う危機に直面したロシアの人々は、キリスト教に根ざす伝統的な生活への回帰を主張する正教会にすがるように救いを求める。ロシア政府も国内の政治、経済混乱に有効な手を打てず、自らの統治の正当性を高めるため、正教会の権威に依存するしかなかった。


プーチン自身はこう語る。
「あらゆる政治家たちが悪名高い民族自決というスローガンのもとに戦ってきました。しかしロシアの人々は、とっくの昔に進むべき道を決めています。ロシア文化を中心とする多民族社会を築くという道です。ロシアの人々は1000年歴史のなかで―住民投票や国民投票ではなく、血によって―何度もこの道が正しいことを証明してきました」
 広大な国内に暮らす様々な民族、宗教間の対立を抑えるため、帝国をまとめるイデオロギーとして浮かび上がってくるのが「反リベラリズム=保守反動主義」だ。


ビリー・グラハム伝道教会によると、グラハム師は185の国と地域で、2億人を超える人々に教えを説いたという。米国の世論調査では、最も尊敬する人物ランキングの上位にたびたび名が挙がった。グラハム師は歴代のアメリカ大統領と親交を持ったことでも有名だ。リンドン・ジョンソンやビル・クリントンは同師の精神的な助言に深い信頼を寄せ、ブッシュ元大統領(子)は酒浸りの日々から改心するきっかけを得たとされる。


ビリー・グラハムにはもう1つの顔がある。世界家族会議と並び、アメリカとロシアの反動派を結ぶパイプ役となっていたのだ。特にロシア正教会との交流は長く、濃密だった。ビリーの死後、ロシアとの絆は息子にしてやはり牧師となったフランクリン・グラハムに受け継がれている。


2017年5月。世界家族会議のブダペスト総会の開催とほぼ時を同じくして、アメリカの首都ワシントン中心部で、ある国際会議が開かれていた。会議の名称は「迫害されているキリスト教徒を保護するための世界サミット」(以下、「世界サミット」)。


米ロの結節点となった「世界サミット」。この会議を周到に準備したのはグラハム家と、ロシア正教会だった。


トランプ政権が誕生したアメリカを筆頭に、世界でリベラル派の退潮が目に付く。世界家族会議などのキリスト教右派がトランプを熱烈に支持し、反動革命とも呼べる現象が始まった。


ソ連という社会主義国家の崩壊は、その後の行き過ぎた自由化に伴う社会の混乱をきっかけに反動化につながり、ロシアにおけるキリスト教の復興をもたらしました。

一方で、アメリカでも、同性婚をめぐる論争をきっかけに、保守主義・伝統主義への回帰の傾向が強くなってきました。

そんな両国の保守勢力に立脚しているのがプーチン政権でありトランプ政権でもある...

東欧などでも保守主義の勢力は強く、リベラル勢力がどんどん退いていっているのが現在の世界情勢だということがこの本を読むことでよくわかりました。









posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 🌁| Comment(0) | 分析・考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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