2019年08月03日

『学校では教えられない満洲事変』を読んで...

倉山満著『学校では教えられない満洲事変』を読みました。

これまでもこのブログに何度も登場した法学者であり、憲法史家でもある倉山氏の比較的最新の著作です。

学校では教えられない歴史講義 満洲事変
学校では教えられない歴史講義 満洲事変

氏は、東京裁判を尊重する自虐史観にもとづく従来の定説をくつがえす見解をこれまでにもたびたび世に問うてきていますが、今回もそうでした。

満洲事変とその事後処理は日本の内政問題のミスであり、侵略行動として国際社会から非難されたわけでも外交上のつまづきや孤立化を意味するものでもなんでもないのだということ。そのことを語っておられます。

以下、例によって引用です。

まず、満洲事変の結果に対し、国際社会は、建前上は日本の満洲に対する進出にダメ出ししますが、実質的にはOKサインを出しています。

日本の主張も認められました。調査団結成が満場一致で可決された決議の留保で、満洲における匪賊討伐権が日本に認められたのです。留保とは、国際会議で条約や決議などの約束に関し、その国にだけ付けられる条件のことです。……(中略)…… 元をたどれば、張学良も父の張作霖も匪賊です。その討伐権が認められるということは、日本の主張を概ね認めるのと同じです。当時の日本人はそれがわかっていて、その報道が流れた瞬間、世論は湧きかえりました。


リットン調査団派遣が決議されるとともに、日本には満洲における「匪賊討伐権」という警察権が認められているんです。

しかし、このときの若槻内閣(民政党内閣)において政変が発生します。

安達大臣が閣議に出てこなくなり、閣内不一致となり、総辞職に追い込まれるんです。

その発端としては、満洲事変の処理に苦悩した若槻首相が野党工作を安達大臣にいったん依頼するものの、安達が野党との協力内閣を進めたら、そのはしごをはずしたからでした。

ある日、若槻首相は安達内相を呼び出して相談します。あげくは自分の代わりに総理を引き受けてくれとまで言い出します。これに対し安達は、状況打開のために政友会と連立を組んで体制を立て直しては如何か、と提案します。二大政党による「協力内閣」を樹立しようというのです。若槻は同意しました。


「西公三羽烏」と呼ばれた原田熊雄元老秘書・近衛文麿貴族院議長・木戸幸一内大臣秘書官長も、「協力内閣」の可能性を探っていきます。


しかし...

十一月十七日、井上は三羽烏の前で力強く宣言します。「協力内閣は軍部に媚びるものである。政策が違う野党と連立して何をしようというのか。与党は過半数を持っているのだから、今の体制で頑張ればいい」と。……(中略)…… 三羽烏は揃って感銘を受けました。井上の強い決心で、流れが変わっていきます。


井上が旗幟を鮮明にするや、安達の子飼いの三十人くらいを除いて、民政党の大多数は「協力内閣」運動に背を向けました。……(中略)…… 井上の意志の強さは、経済面では金解禁への固執という悲劇的な形で現れました。しかし、井上の政治的強さは外交面では生かされました。満洲事変勃発以来、関東軍の脱法行為を追認せざるを得ない若槻内閣を立て直し、幣原外交を軌道修正して陸軍と妥協可能な線に修正し、国際社会の信用を取り返していくのです。


安達は閣議に出てこなくなります。若槻は他の閣僚を何度も使いに遣り説得しますが、安達は拒否します。大臣の引きこもりです。しかし、子供の我がままでは済みません。帝国憲法の時代は、大臣がひとりでも造反したら、いったん内閣を総辞職しなければいけないという時代でした。


この結果、政権は野党の政友会に回り、犬養内閣が成立します。

が、この結果、国際社会に信用があった幣原外相が退陣してしまい、日本の対外的信用がなくなっていくのです。

国際連盟と日本の妥協が成立した、その日に政変が発生しました。そして国際社会で信用があった幣原が退陣しましたから、色眼鏡で見られることになります。


さらに悪いことに、この政変で就任した犬養首相がしばらく後に五・一五事件で暗殺されてしまいます。その後任は、政党に基盤を置かない海軍軍人の斉藤実内閣となりました。いわば、政党政治の終焉となってしまったのです。

これ以後、日本の政治と国会は弱体化し、軍部や右翼が影響力を強めていくことになります。

陸軍が熱河を獲得、外務省が満洲国承認を支持して国際連盟の要求を突っぱね、世論が支持する。これが齋藤内閣の「挙国一致」でした。


軍部や右翼が国民を扇動し、ポピュリズムとともに代議制民主主義が崩壊し、太平洋戦争へと突入してゆく...

今でも参考になる教訓話だと思います。






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

にほんブログ村