2019年09月14日

星野博美著『みんな彗星を見ていた』を読んで

星野博美著『みんな彗星を見ていた』を読みました。

長文のエッセイみたいな感じ…

みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記 (文春文庫)
みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記 (文春文庫)

内容としては、著者本人のキリスト教に触れる機会が多かった人生をつづり、そこから”リュート”という中世ヨーロッパで流行った楽器について語り、さらには、今では復興しているリュートのレッスンを受けたり、実際に買ったりした経験談を語っています。

それでいながら、キリスト教および日本の戦国時代〜江戸時代にかけてのキリスト教史や関連するエピソードについても、いろいろと調べた結果を書いておられます。

そのあたりに興味深い記述が多々ありました。

クリスチャン(カトリック)である自分にとっては大変参考になりました。

クリスチャンじゃなくても、歴史好きの方のような人のためにも、以下に引用して紹介したいと思います。

ルネサンスの時代には、芸術や解剖学、科学などが一斉に花開いた。ルネサンスを代表する芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチは解剖学に並々ならぬ興味を抱き、よく死体を解剖してはデッサンを描いていたという。その一つ一つの分野が切っても切れない関係にあり、互いに影響を与えながら飛躍的に発展を遂げていった。
「音楽も解剖学と密接に関わっているんです。リュートは、無理な指の動きはけっしてしない。人体の自然にかなった、まさにルネサンス的な楽器なんですよ」
まさかリュートのレッスンに、ダ・ヴィンチが登場するとは思いもしなかった。


テニスのラケットなどにも使われるガットは、「ガッツがある」という言葉が示すように、もともとははらわたの意味で、羊の腸である。


庶民にとってガットは安いものではなく、できるだけ切らずに長く使いたいものだった。そろそろ切れそうだと思ったら、緩めて切れないようにする。その日の天気や気分で強めたり弱めたりする。そんなことを自由にしていたはずだ。
「いつしか音楽は、調弦や楽譜に縛られた、ずいぶん窮屈なものになってしまいました」


当時、華僑といえば圧倒的に広東省出身が多く、海外で暮らす華僑の共通語といえば広東語だった。劇中でジョン・ローンが話すのは広東語と客家語だ。また、リドリー・スコット監督の不朽の名作「ブレードランナー」は歌舞伎町とチャイナタウンが混在した、混沌としたオリエンタル・タウンのイメージが重要な記号になった映画で、日本のイメージが多様されたことも日本では話題になったが、レプリカントの眼を製作する老人が話す言葉は広東語である。……(中略)……広東語科の特徴は、昔からカトリック関係の生徒が多いことだ。八六年時点でも、クラスにはアメリカ人のパードレがいた。


大学時代、西洋音楽史の金澤教授は口を酸っぱくして言ったものだった。音楽を知りたければ当時の絵画を見ろ、絵画を知りたければ宗教を知れ、この三つは決して切り離せない、と。


問題は帰りだ。台風と黒潮が最大の敵で、「行きはよいよい、帰りはこわい」状態だった。スペイン船はインドや喜望峰経由で帰途につくわけにはいかない。ポルトガル領海内に入りこめば拿捕され、捕虜となってヨーロッパへ送還されるしかない。積荷もすべて没収されてしまうのだ。


ウルダネータという航海士は、洋上であまりに多くの死に立ち会ったためか、カルロス一世に冷遇されたか、一五五三年にはアウグスチノ会に入って俗世を捨ててしまった人物だが、豊富な航海経験を買われて再び航海に出た。彼が作成した航海誌と海図はその後の太平洋航海に多大な貢献をし、海洋帝国スペインのいわば国家機密となる。


ウルダネータによると、北緯三六度のあたりに大きな岬があり、まだ東風が吹きつけていたが、四〇度付近まで北上すると待望の北西風に出会うことができたため、時には四三度あたりまで北上しながら一気に太平洋を横断した。あとはひたすら東へ一直線に進み、アメリカ大陸に突き当たったらひたすら沿岸を南下し、メキシコへ戻った。それがウルダネータの推奨する、黒潮を避けた帰港路だった。


ウルダネータが推奨する四〇度付近は? 久慈! NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地だ。三九度付近が気仙沼。そして三八度付近にあるのが仙台、石巻。


著者は東京の下町に生まれ、私立のキリスト教系の学校で育った方...

クリスチャンではないものの、キリスト教系の教育を受けた方です。

豊富なキリスト教に関する知識と多大の興味が、さまざまなことを教えてくれました。

とくに、日本人から見れば一枚岩だと思われるスペインとポルトガルが実は一触即発の競争状態にあったこと、だからスペインは、ポルトガルの縄張りであるインド洋周りではなく太平洋を渡る必要があったこと、そのために伊達政宗の領地に寄港地を作る必要があったこと、そのことによって政宗の遣欧使節派遣につながったことがあらためてわかりました。

文体的にもわかりやすく、読みやすいから、ぐいぐいと読者を最後まで引っ張って行ってくれます。

おススメの一冊です。






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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