2019年12月01日

三橋貴明著『米中覇権戦争残酷な未来透視図』を読んで(後編)

昨日の記事からの続きとなります。

著者の中国共産党政権への評価は、”したたかなグローバリスト”です。

つまり三橋氏は、中国をスターリン流の一国共産主義者の集まりとは見ていません。

以下、再び引用します。


3.中国の現状分析

中華人民共和国憲法の前文には、「中国の諸民族人民は、引き続き中国共産党の指導のもと、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、ケ小平理論及び”3つの代表”の重要思想に導かれ、人民民主主義独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し」と、書かれている。さらに、中国の国防法において、「中華人民共和国の武装力は中国共産党の領導を受ける」と、明記されているため、人民解放軍は法的にも中国共産党の支配下にあるのだ。


中国共産党は国家という概念を否定し、共産党という「党」の下に諸民族を統合するとしている。「諸民族」である以上、チベット人もウイグル人も、あるいはモンゴル人も、中国共産党の「指導」の下に入ることに不整合はないのである。あるいは、将来的に「日本民族」までもが、共産党支配下に入る可能性はゼロではない。中国共産党が「中華人民共和国の政党」ではない以上、指導下に入る民族に日本人が加わったところで、特に問題はない、という話になってしまう。


欧州に至るまで各国にインフラを整備する「一帯」。さらには、海の道を辿る「一路」を国家を上げて開発すると宣言し、諸外国に高利でカネを貸し付け、中国企業が中国人労働者を使い、インフラを整備する。カネの返済が滞るならば、スリランカのハンバントタ港のように港湾の運営権を「99年」もの期間、譲渡させる。


一帯一路は、中国経済の過剰供給能力を消化でき、カネの力で各国の重要拠点を手に入れ、さらにはシーレーンをも確保するという一石三鳥の戦略なのである。


中国共産党は、ロシア型覇権国や支那大陸の中華帝国としての弱み、アメリカ型覇権国の強みを理解した上で、確固たる戦略に基づき、覇権国アメリカに挑戦しようとしているキメラなのだ。こんなことは書きたくないのだが、見事なものである。


そんな中国に対抗できるのは唯一アメリカですが、アメリカの覇権はそろそろ賞味期限切れになりつつあり、アメリカの後継国家(後継覇権国)を用意しておく必要がある。ただし、西欧諸国は頼りにならないと著者は説きます。

なぜなら、西欧諸国は移民流入によりナショナリズムが崩壊しつつあるからだそうです。

そんななか、ナショナリズムがまだ生き残っている日本はアメリカを助け、再軍備と経済復興をせよ、少子高齢化は問題ではないと説いています。


4.西欧と日本の分析

西欧諸国が移民国家化してしまうと(すでにしているが)、アメリカ型覇権国に必須の健全なナショナリズムの構築や、生産性向上が不可能になってしまう。それどころか、各国ともに分裂する国家、分断される国民を統合するべく、論理的には「強権国家」、つまりは第二地域の帝国と化さなければ、国家の維持が不可能となる。皮肉な話だが、寛容の精神で移民を受け入れた結果、西欧諸国は寛容を維持できなくなっていくのである。


2011年のイギリス国勢調査によると、首都ロンドンの住人の内、白人のイギリス人が占める割合は約45%と、過半数を割り込んでいる。しかも、イギリス国内に占めるキリスト教徒の割合が、現在は59%にまで下がってしまい、2050年までには三分の一に縮小する見込みである。


スウェーデンでは、今後30年以内に、主要都市のすべてでネイティブなスウェーデン人は少数派に転落する予測とのことである。ウィーン人口問題研究所によると、今世紀の半ばまでに、15歳未満のオーストリア人の過半数がイスラム教徒になってしまう。


高度成長期、欧米先進国の経済成長率が5%前後で推移する中、我が国は唯一、平均で10%という高い成長率を続けた。理由は、別に「日本人が優秀だから」といった話ではなく、単に移民を入れなかったためだ。人手不足を移民で解消できない以上、経営者や政治家、国民は生産性向上でインフレギャップを埋めるしかない。それで、正解だったのだ。


「インフレギャップ→生産性向上→実質賃金上昇→消費投資拡大→インフレギャップ」という、循環構造が続くことこそが、経済成長の「黄金循環」なのである。


冷戦期、日本から最も近い民主主義国はオーストラリアだった。……(中略)……これは仮説だが、当時の台湾や韓国が民主国家で、日本と「ヒトの移動の自由」で合意していた場合、我が国の成長率は半分程度、5%前後に落ちていたと思われる。


歴史は「人手不足が深刻であればあるほど、生産性向上により経済力を強化できる」ことを教えてくれる。


深刻化する一方の人手不足解消のための四つの投資が可能な国。生産性向上のための技術力や、裾野が広い多分野の工業生産力が残っている国。その国の名は、日本国。信じがたい現実だが、もはや世界にはアメリカの覇権を受け継ぐべき「第一地域のシーパワー」が、日本以外には残されていないのだ。グローバリズムという「国家否定」の考え方が、欧州の覇権候補国を次々に飲み込み、移民国家と化すことでナショナリズムを破壊していった。そんな中、我が国のみが唯一、高度成長期に移民を受け入れなかったため、移民人口比率がまだ低いままだ。


中国共産党というキメラの帝国との間で、軍事バランスを維持するための海軍を「持ち得る国」は、我が国以外には存在しないのである。


再軍備はともかく、いま一度、経済成長へと舵を切るのは不可能ではないでしょうね。

それに、人手不足が経済成長を促す原因のひとつであることは確かに著者の言う通り、歴史の事実です。

世界に先がけて産業革命を成し遂げたイギリスは、インドの人海戦術的な綿工業と綿製品に対抗するために機械を使って生産性を向上させることを強いられ、それが「世界の工場」と呼ばれるような工業国家へと変貌をとげることになったのですから。

少子高齢化による生産年齢人口の低下は今後の日本経済にそんなにマイナスではないなと思いました。AIなども出てきてますし、ロボット化も進展していますからね。

日本の製造業の未来は意外と明るいぞ!






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☔| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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