2020年01月24日

井沢元彦著『逆説の世界史3』を読んで(前編)

井沢元彦著『逆説の世界史3』を読みました。

”逆説の日本史シリーズ”で有名な歴史小説家、井沢元彦氏の世界史バージョンです。

逆説の世界史 3 ギリシア神話と多神教文明の衝突 - 元彦, 井沢
逆説の世界史 3 ギリシア神話と多神教文明の衝突 - 元彦, 井沢


この巻では、古代インドとギリシアを扱っています。いずれも現代の世界に、特に日本に強い関連があり、そういう意味で現代社会に対する理解を深めるために非常にためになることが多々記されておりました。

ギリシャとインドというと素人目には違う世界と思いがちですが、インダス文明とメソポタミア文明(古代ギリシャはここから多大の影響を受けている)は交流していたそうですし、のち、アケメネス朝ペルシアとアレクサンダー大王によってより強く結び付けられもしました。

初期の仏像はギリシャ彫刻の影響を受けているとも言われますし、仏教がシルクロードを経由して東アジアに伝わる途中において、アレクサンダー大王の残したギリシャ人入植者の影響を中央アジアにて受けてもいるようです。

いわゆる”ヘレニズム文化”と呼ばれるものですが、中学高校の歴史の教科書にも載っているこのヘレニズム文化は「洋の東西」に影響を与えたという意味で我々の想像以上に巨大な存在感を人類の歴史にはなっているんです。

この著作でも、最後のほうはアレクサンダー大王とその遺産の記述で占められています。

いくつか引用してみましょう...

それまでの征服者にまったく見られないアレクサンドロス大王の特徴は、支配した国々の習慣を取り入れて国家を統治しようとしたことである。……(中略)……ヘレニズム文化とは、一般的にペルシア、インドなどの東方文化とギリシア文化との融合で、民族を超越する普遍的性格を持つようになった文化と考えられているが、イデア的、あるいはキリスト教的、イスラム教的に、真理を一つしか認めない精神世界では、思想、文化の融合ということ自体が、そもそもあり得ないのである。


そういう観点で歴史を見れば、まさにアレクサンドロス大王の帝国とは、アリストテレス的、言葉を換えれば、多神教的、多元的価値観を持つ哲学によって成立したものであり、それがさらに発展し、完成したものがローマ帝国という見方もできるわけである。


アレクサンドロス大王がアリストテレスから受けた最大の影響は「イデアは存在しない」ということではなかったか。これはアリストテレス哲学の根幹にある主張である。


マケドニア王国の都市スタギラ(Stagira)に生まれたアリストテレスは、若くしてプラトンのアカデメイアに入学し、二十年にもわたって学問に励んだ。プラトンから直接教えを受けたこともあったらしい。そして、プラトン哲学に強い影響を受けたものの、最後まで反発を覚えたのがまさにプラトン哲学の極めて観念的な部分である「イデア論」であった。


プラトンにおいては、「魂(プシケ Psyche 霊あるいは霊魂とも同義)」はイデアと同じく、肉体とは別個に独立して存在するものであった。……(中略)……アリストテレスは魂を肉体から独立したものではなく、身体の、例えば手足を動かすのと同じような、機能と捉えた。魂の存在は客観的に証明できないが、人間が肉体的機能として思考する能力を持っていることは事実だからだ。そしてその思考能力つまり理性こそ、魂の機能の最高のものだと考えたのである。


プラトンは哲人王(philosopher kings)、つまり優れた哲学者でもある王によって統治された国家を最上とし、アテネなどで行なわれていた民主政には否定的だった。……(中略)……物事の見方についてプラトンと対照的な立場を取るアリストテレスも、この点ではプラトンと同じで、民主政よりも君主政を優越した政治体制とした。もちろん、その根拠はプラトンとは違う。


人間の求める最高善は共同体をいかにして善なるものにするかという政治学によって探求できるのであり、それは同時に人間の生き方つまり倫理学を探究することでもある。



民主主義には2つの形態があります。すなわち、@直接民主制とA代議制民主主義(議会制民主主義)ですが、現代の社会はAをもって運営されています。

その淵源が、プラトンの哲人王→アリストテレスの人間学→最高善の概念とその追求→アレクサンダー大王という哲人王〜ローマの元首政への結実という流れにあり、それが近代になって復興したのだと再認識しました。

ヨーロッパに発祥し、世界に展開した議会制民主主義は、意外にも、ギリシャ〜東洋哲学の世界にベースを置いている、つまり、多神教的世界観に基礎を置いているんですね...

ユダヤ・キリスト教文明だと言われるヨーロッパ文明ですが、政治体制と民主主義についてはそうではないという理解がこの本で学んだことの最重要ポイントでした...


まだまだ語り足りないことがあるので、明日に続きます。






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 気づき・ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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