2020年03月01日

福冨健一著『東條英機』を読んで

福冨健一著『東條英機』を読みました。

第二次世界大戦における日本の最高責任者とされる人物の伝記です。

東條英機 天皇を守り通した男 - 福冨 健一
東條英機 天皇を守り通した男 - 福冨 健一

この人物は悪玉というイメージがどうしてもつきまといますし、また擁護しただけで非難されてしまうこともあります。

”東京裁判”と同じくいわばアンタッチャブルな人物で、歴史検証さえも許されないわけです。

しかし少数ながら歴史の真実に迫ろうとする試みはあるわけで、この本がその一つです。

既存のイメージを覆してくれるいろいろなデータを知りうることができる良書でした。

以下、引用しつつ、紹介してみたいと思います。

まず、軍国主義のきっかけとなった二・二六事件ですが、ここでは東條は反対派でした。その結果、満州に左遷されてしまうんです。しかし...

当時、軍内では、憲兵の地位は低く見られていた。東條は予備役編入は免れたものの、憲兵の職は明らかに左遷である。……(中略)…… 彼は、「帝国軍人は、与えられた仕事をまっとうすべし」という信念を持っていた。この信念を満州の憲兵隊員に徹底したのである。皮肉なことに、左遷だったはずの満洲国の憲兵の地位が、東條によって上がってしまうのである。
それまで治安維持は、軍と警察が分離して行っていた。東條はこれを、強引に関東憲兵隊司令官を頂点とする機構に一元化し、満洲国の治安を安定させてしまうのである。


逆境をバネにし、偉大な成果を仕事であげたようです。

そもそも群れを嫌い徒党を組まず、清廉潔白で真っ直ぐな性格だったようです。

開戦責任についても、関係各所と折衝し、必死になって甲乙の両妥協案をまとめ上げ、開戦一色だった軍部や世論を向こうに回して和平の可能性を生み出しています。残念ながら、アメリカ側に妥協する意志が最初から無かったわけですが...

東京裁判でも堂々と連合国側と渡り合い、内容的には勝訴に等しい成果を挙げます。

裁判でのキーナンと東條との戦いに対するアメリカ人弁護人や諸外国の反応は、明らかにキーナンの敗北、東條の勝利であった。


連合国は東條証言について、「日本占領に対する、最大の一撃になってしまった」と受け止め、東條証言が連合国にダメージを与えないよう新聞やラジオ放送を規制し、日本の世論を徹底的にコントロールした。また、イギリスは東條証言を法廷で打ち負かすのは無理であるから、証言を否定する「対日声明」を発表しようと考えた。


また、俗にいう”A級戦犯”という言葉についても注意が必要です。

じつは、一般に東京裁判は「A級裁判」ともいわれるが、A級、いわゆる「平和に対する罪」のみで死刑になった人はいない。実際は、起訴状の「殺人および殺人の共同謀議」「通例の戦争犯罪」で処刑されている。

ということだそうです...

家系は能楽だったということも意外でしたし、戦後に逮捕されて投獄された後は仏教に帰依し、判決後は再審請求も望まずに従容として死出の旅にでた東條氏は、じつに日本的な中間管理職的な人物だったと思います。

逆にいえば、真面目すぎて、あくの強いチャーチルや吉田茂のほうが悪玉に見えるくらいです(笑)。

面白かったのと同時に、政治はやはり善悪やマジメだけでは語れないな、とあらためて実感しました。







posted by スイス鉄道のように at 03:00| 東京 ☀| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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