2018年09月19日

中田力氏の日本古代史の著作2冊を読んでの感想(前編)

中田力著『日本古代史を科学する』と『科学者が読み解く日本建国史』を読みました。

日本古代史を科学する (PHP新書)
日本古代史を科学する (PHP新書)

科学者が読み解く日本建国史 (PHP新書)
科学者が読み解く日本建国史 (PHP新書)

著者は理系出身の方で、医学者です。

科学的、とくに医学的なな観点から東アジア史、そして、古代日本史にメスを入れ、独自の理論を打ち立てておられます。

鍵となるのは男性のY染色体遺伝子で、これは近年、研究が進んでいる分野でもあります。

その学術的成果をふまえ、稲作をもたらした人々と弥生人の関係、邪馬台国の位置、大和朝廷の誕生の経緯、古代日本の皇室の系譜、などを推理しておられます。

以下、引用です...

日本人男性の持つY染色体は、その八〇%程度を二つの大きなハプログループが占めている。ハプロタイプDとOである。それぞれがほぼ四〇%ずつを占めるが、Oのほうが少しだけ多い。考古学の定番である、縄文人と弥生人という分類の仕方を継承すれば、縄文人がDに、弥生人がOに対応することは確定している。


一番多いのがO2bで、続いてO3が多い。O1、O2aはともに少数派で、日本人男性全体における絶対数でみれば、Cよりも少ない。


O2bは、韓国(北朝鮮のデータはない)と日本とに分布している。ある程度、中国本土にも存在するO1、O2aとは異なり、O2bは満州地域にみられるだけで、ほとんど中国本土には残存していない。


O2bの拠点は、現在の江蘇省北部から山東省にかけてと考えられ、大汶口文化、山東龍山文化の担い手であった可能性が極めて高い。


白川静氏は、商(殷)王朝が東夷の国、つまりは、山東龍山文化の担い手が打ち立てた王朝だったと断言している。だとすれば、商(殷)王朝はO2bの王朝だったことになる。


後の夏王朝が開かれた二里頭文化の地域をこの原始夏族に提供したのが、O2b山東龍山文化を率いていた「舜」であった。これが、舜が禹に禅譲したとの記載となっているのである。


舜に禅譲したのは尭である。おそらくそれは、山東龍山文化の人口増加と領域拡大に伴い、O2b系の人々が、その土地を求め、獲得したことを表しているのだろう。


つまり、尭から舜、舜から禹への禅譲とは、仰韶文化のO3の土地の一部を山東龍山文化のO2bが譲り受け、それを原始夏族のO1に譲り渡した過程を記載しているのである。


北方から展開して、やがて呉を建国した集団は、山東地方に展開していたO2b系の種族であったに違いない。ただし、西進し、商(殷)王朝を開いた王権・神権集団ではなく、O2bから分離した農民集団であった可能性が高い。おそらくそれが、日本の弥生時代を開いた、O2b1のグループであったのだろう。


アイヌ男性のYハプロタイプが圧倒的にDグループで占められており、沖縄の男性にもDグループが多いことから、初期の縄文人がDグループ、後期の縄文人がCグループであると考えている学者も多い。弥生人とされるOグループの男性が占める割合は、九州に高く、本州でも西高東低の分布を示す。


日本の弥生時代の幕開けと連動するように、当時、上海付近の土地を支配していた国家が滅亡している。姫姓の呉である。紀元前四七三年であったとされている。


弥生時代は、呉の滅亡により、水田稲作技術と共に、長江下流域から渡来した人々によってもたらされた。それは、イネの遺伝子解析から明らかになったことである。


佐藤洋一郎氏によって明らかにされた、RM1-b遺伝子を持つ温帯ジャポニカの分布は、日本に弥生時代をもたらした水田稲作が、韓半島を経由せず、直接、長江河口付近から伝わった技術であることを証明している。


魚豢の『魏略』には倭人の記載として、自謂太伯之後、との伝聞がある。つまり、倭人は自らを呉の末裔であると称していたのである。


始まりは、呉の滅亡である。紀元前四七三年のことであった。太伯の子孫、姫姓の王と海上に逃れたO2b1の民は九州に辿り着き、やがて、博多の奴国を建てることとになる。


男性のY染色体のタイプや、稲の遺伝子の解析から、古代の東アジアの動向が浮かび上がってきます。

書誌学や考古学では解明しきれない領域に科学がメスを入れることで判明する謎解きが面白く、ワクワクしながら読みました。

中国古代の王朝、五帝→夏→殷への政権交代や、春秋時代の呉国の消長についても、わかりやすく紐解けていると感じました。

氏の推理のすべてが当たっているのでないにしても、かなりいい線をついているんじゃないでしょうか。

明日は、邪馬台国の場所や大和朝廷の解明について引用しつつ、書きたいと思います。









posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 🌁| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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