2019年03月16日

加来耕三著『坂本龍馬の正体』を読んで...

加来耕三著『坂本龍馬の正体』を読みました。感想をば。

NHK大河ドラマ(『龍馬伝』)でも取り上げられた幕末の志士・坂本龍馬...

最後は明治維新が成ることを目にすることなく暗殺されてしまったわけですが、いろんな伝説や謎の多い人物でもあります。

その龍馬につき、できるだけ彼の素顔を描き出そうと試みたのがこの書といってよいでしょうか。

坂本龍馬の正体 (講談社+α文庫)
坂本龍馬の正体 (講談社+α文庫)

まずは、巷でよく言われるような薩長同盟の仲介や大政奉還の原アイデアを出したのは、実は、彼ではないようです。

以下、引用です。

明治維新百年から百五十年にかけて、わずか五十年ながら、すさまじく進んだ歴史研究の成果では、虚構は次々とはぎとられ、肝心の薩長同盟の仲介にしても、龍馬のみならず複数の人々が介在して成立にいたったことが明らかとなり、このおり一番熱心であった仲介者はむしろ、ともに暗殺された“土佐の四傑”で龍馬とともに数えられた中岡慎太郎ということになってきた。また、薩長同盟締結の、最大の立役者はといえば、二度土佐藩を脱藩した風来坊の龍馬ではなく、成否の決定権を“国父”島津久光より委譲されていた、薩摩藩家老の小松帯刀であったことが明確となってしまった。ちなみにこの小松は、日本最初の新婚旅行に龍馬とその妻お龍がいった、と喧伝されている鹿児島の霧島に、それより十年早く新婚旅行にいった人物でもある。


龍馬による「船中八策」、「新政府綱令」―すなわち、平和的大政奉還とそれによる国家運営のプラン―これこそは、と思いきや、そのことごとくが幕臣・大久保忠寛(のち一翁)が初出であり、越前福井藩主・松平慶永(号して春獄)や龍馬の師である佐久間象山(ぞうだん、とも)ついで師と仰いだ幕臣・勝義邦(号して海舟)、あるいは春獄の政治顧問・横井小楠などから教わったものであり、とても龍馬のオリジナルといえるものではなかった。


改めて留意しておくべき点が幾つかある。一つは、この薩長同盟にかかわった者の大半が、高島秋帆を祖とする西洋流砲術において、一門であったということ。龍馬の個人的魅力もさることながら、二藩の関係者には同一学派が大勢を占めていた事情があった。従来のように、風来坊が二つの大藩の秘密同盟をまとめた、という単純な物語にはそもそもならなかった。


薩摩の島津久光の命を受けた大久保一蔵・大山格之助(綱良)は長州へ入り、桂と密議の結果、討幕挙兵の具体案について取り決めをしている。彼らは平和裡の政権返上は認めず、あくまで戦うべく、九月七日、薩土盟約の破棄と武力討幕の方針を後藤に伝達した。


もし、土佐藩兵の一部が薩長同盟軍に荷担し、勝利したとしても、過去に土佐勤皇党を殲滅した容堂の立場が、それによって救われるとは考えられない。むしろ、排除の口実にされる公算は高かった。土佐藩そのものは当面、海援隊・陸援隊との結びつきもあり安泰であろうが、容堂個人とその側近=“新おこぜ組”は、間違いなく失脚させられる。無論、その時は後藤も同じ奈落へ突き落とされるはずだ。


「何か起死回生の妙手はないものか?」
 後藤にかき口説かれ、この時、龍馬が語ったのが、くり返し勝海舟や大久保一翁、松平春嶽らが教授してくれた「大政奉還」の一手であった。


それもそう、という感じですよね。

龍馬は土佐藩では下級藩士であり、活躍していた時期はその藩さえも脱藩していて一介の浪人だったわけです。

身分制度の厳しい時代に、そんな立場の人間が大きな仕事ができるはずがないんです。

そして、龍馬暗殺の真相はといえば、その直接の下手人は幕府の見回り組だということは明らかになっているものの、黒幕は土佐藩の重役である後藤象二郎である可能性が高いだろうとのこと。

直接、手を下す必要はなかった。否、自らとのつながりがない方が、この種の暗殺には都合がよかったであろう。新撰組のみならず、後藤には幕府の中にも知己は多い。


彼にとって龍馬との思い出は、できるだけ回想したくないものであったようだ。佐々木と同様に後藤は生涯、沈黙しつづけている。その一方で彼は、海援隊に参加した者の中で、土佐勤皇党に連なる人々を、次々と社会的に葬っている(拙著『坂本龍馬の魅力学』参照)。


龍馬から「大政奉還」のアイデアだけ盗み取るとともに、自らの手柄とし、あわせて政治的仇敵であった土佐勤皇党一派を幕府の手で始末した、ということのが著者の推理です。

この他にも、坂本家の経緯や土佐勤皇党の首領だった武市半平太が粛清された経緯、龍馬と剣術の関係、龍馬の政治的意図など、目を見開かれる考察がたくさんありました。

面白いですよ。おススメです。









posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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