2019年11月20日

柄谷行人著『世界史の構造』を読んで(前編)

柄谷行人著『世界史の構造』を読みました。

約500ページに渡る大作で、内容も読みごたえがあり、歴史を学んできた者にとっての上級レベルの一品だといえます。

最初は単行本で出たみたいですが、今では文庫化されていてとてもとっつきやすいですし、携帯に便利で外出先でもちょくちょく読み進められて良かったです。

世界史の構造 (岩波現代文庫)
世界史の構造 (岩波現代文庫)

内容としては、あのマルクスの唯物史観を超越した新しいものの見方を提示しています。

この人すごいっ!!、って思いました。

以下、ポイントとなるところを引用してみますね。

マルクスは青年期に、ヘーゲル法哲学の批判から知的活動を開始した。その際、彼は、資本=ネーション=ステートを至上の地位におくヘーゲルの体系に対して、国家やネーションは観念的な上部構造であり、市民社会(資本主義経済)こそが基礎的な下部構造であると考えた。


プルードンも初期マルクスも、近代国家を市民社会の自己疎外としてとらえた。すなわち、そこでは、公共的なものが国家として疎外され、市民社会は私的なブルジョワ世界となる。


マルクスの考えでは、国家によってアソシエーションを育てるのではなく、アソシエーションの発展によって国家を解消することこそが課題であった。


マルクスは、経済的な階級対立が揚棄されるならば上部構造である国家は自然に消滅するだろう、という観点をとりつづけた。そして、そのことがのちに、社会主義にとって致命的な結果をもたらすことになったのである。


マルクスが絶対的に受け入れなかったのは、ラッサ―ルの「国家社会主義」である。……(中略)……ラッサ―ルがヘーゲルにならって国家を理性的なものとみなしているのに、マルクスは国家を消滅すべきものとして見ていた。


われわれは、カントはヘーゲルによって乗り越えられ、ヘーゲルはマルクスによって乗り越えられたというような通念を斥けなければならない。


「万国の労働者よ、団結せよ」というスローガンに代表されるように、世界的な労働者の蜂起と権力奪取によって国家はなくなるだろうと予想したマルクスの考えには致命的な欠陥があった...

それは、ネーション(国民感情)というものの存在を軽視していたことです。

ネーションは、近代において、国家(ステート)および資本と結びつき、”近代国家”というものを形成し、この仕組みが非常に強固であると同時に、それが無い場所では求められるという結果をもたらしたのです。

注目すべきことは、一八世紀後半のヨーロッパに、アンダーソンがいうような「想像された共同体」が形成されただけではなく、まさに「想像力」そのものが特殊な意義をおびて出現したということである。ネーションが成立するのと、哲学史において想像力が感性と悟性を媒介するような地位におかれるのとは同じ時期である。


ネーションとは、商品交換の経済によって解体されていった共同体の「想像的」な回復にほかならない。ネーションは、いわば、資本=国家に欠けていた「感情」をそこに吹きこんだのである。


私は最初に、いわゆるネーション=ステートは、資本=ネーション=国家として見るべきであると述べた。それは、資本主義経済(感性)と国家(悟性)がネーション(想像力)によって結ばれているということである。


ネーションにおいては、支配の装置である国家とは異なる、互酬的な共同体が想像されている。その意味で、ネーションは、平等主義的な要求があり、国家や資本への批判とプロテストをはらんでいる。だが、同時に、ネーションは、資本=国家がもたらす矛盾を想像的に解決することによって、それが破綻することを防いでいる。


国民感情(実際にはそんなものはなく、一種の共同幻想)は人と人とをつなぎ、同朋意識と助け合いを生み、弱者や虐げられた者に対して手を差し伸べる機運を醸成し、社会主義的な政策を政府にとらせてプロレタリアート革命を防ぎ、国家(ステート)の強化に寄与したのです。

国家は資本主義を支持しつつ、富裕層から集めた税金を貧者に再分配するという「分配の正義」を実施し、社会はうまく回ることになります。

こうして醸成され強められた愛国心は、第一次世界大戦の勃発によって「第一インターナショナル」という世界初の国際左翼勢力に瓦解をもたらします。

さらに20世紀後半にさしかかると、この流れは福祉の充実に結びつき、社会主義国家や共産主義革命を目指す左翼勢力は現実性を失い、解体するか穏健な社会民主主義へと変質してゆきます。

一九九〇年以後、先進国の左翼は、旧来のような革命を完全に放棄した。市場経済を認め、それがもたらす諸矛盾を、民主的手続きによる公共的合意、さらに、再分配によって解決していこうという考えに達した。つまり、福祉国家主義あるいは社会民主主義に落ち着いたのだ。


う〜ん、世界史の一連の流れをよく見て分析しているな、この人。と思いました。

すべてがジグゾーパズルがピタっと合わさるように国家や左翼勢力の興亡の理屈が理解されますから。

他にも目を見開らかせられる見方が多々ありました。

それを引き続き紹介したいと思いますが、長くなりましたので明日へと続きます...






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 気づき・ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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