2020年03月07日

米田彰男著『寅さんとイエス』を読んで

米田彰男著『寅さんとイエス』を読みました。

映画「男はつらいよ」シリーズの主人公であるフーテンの寅さんとイエス・キリストの共通点を取り上げつつ神学的に掘り下げてゆくという、レアーな評論です。

作者はカトリックの神父であり、内容的には伝統的な正統神学やキリスト教の教義をふまえた確かなもの。

寅さんとイエス (筑摩選書) - 米田 彰男
寅さんとイエス (筑摩選書) - 米田 彰男

それでいて堅苦しくなく、楽しく読める一冊になっています。

イエスと寅さんの共通点は、既存の社会やそのルールにとらわれず、人間性をふまえた生き方と他人への接し方を徹底したことであると作者は主張します。

以下、引用します。

寅とイエスの両者に共通する逸脱は、他者を生かすための他者への思いやりであり、表層の嘘を暴き真相を露にする、いわば道化の姿である。


フーテン性の第一の意味の奥深さは、言葉を変えれば深い孤独に裏打ちされた優しさである。


実はフーテンの寅と同様、フーテンのイエスであることが、聖書の中から垣間見られる。即ち、フーテンの二つの基本要素―(一)常識をはみ出した者、(二)故郷を捨てた者としてのフーテン性が、なんとイエスについても指摘できるということだ。


『男はつらいよ』のラストシーンが常に日本晴れで終わるように、また大貫隆がある時期からのイエスの心境を、ビッグバンの文脈で使う表現で「宇宙の晴れ上がり」と呼ぶように、イエスの平常心は常に「日本晴れ」であり「宇宙の晴れ上がり」の状態であり、澄み渡る心の清さは快活さとなってまわりを照らし明るくしたに違いない。


二人とも、どのような場面であれ、”人間らしさ”、いや”人間臭さ”を決して失わず、他人への優しさを軸に権力者や体制擁護派の偽善や嘘を喝破します。

そして、他人の必要にいつでも応えるために、定職を持たずに”暇”を作っておく...

事が終わったあとは、水戸黄門にも通ずるような日本晴れの明るさが周りを照らす...

人が人生を生きるうえで、まさに世の光であり救世主である...

また、二人の生き様の似姿を指摘することを中心にしながらも、キリスト教神学の核心部分や歴史をも説いてくれています。

キリスト教徒なら必読、でなくとも人間学を学ぶことのできる良書だと思いました。

おススメの一冊です。





posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 雑談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


にほんブログ村