2020年02月08日

黒田明伸著『貨幣システムの世界史』を読んで

黒田明伸著『貨幣システムの世界史』を読みました。

著者は京大卒、現在は東京大学東洋文化研究所教授で専門は世界貨幣史。ただし、元は歴史学者だったようです。

貨幣システムの世界史 増補新版――〈非対称性〉をよむ (世界歴史選書) - 黒田 明伸
貨幣システムの世界史 増補新版――〈非対称性〉をよむ (世界歴史選書) - 黒田 明伸

現在の活動は、日本を離れて国際的なご活躍をなさそうとされていて、それも貨幣システムを世界的に改善しようという良き野心をお持ちになられているようです。

以下、あとがきからの引用です。

今日の貨幣システムの最大の問題点は、一九三〇年代以降の管理通貨制の下、国民通貨の国際相場にしたがい、同一の労働に対する評価の差が一〇〇対一にまでなろうとしている点に現れている。世界規模の公然たる不正義といえるこの格差に対して、現在の現地通貨運動の射程は残念ながら及びそうにない。


導入当時はほとんど差がなかったドイツとスペインの失業率が、現在は驚くべきほどの差となっているように、国家間通貨統一がもたらした負の側面は明らかとなっている


旧版出版後、貨幣に関わる理解としてより明確になった点をかいつまんでいえば、下記のごとくである。
 (一)匿名的に取引を媒介する通貨は、滞留をさけがたいため、完全な弾力性をもって供給することはできない。また指名的信用に依る取引は、本質的に債務累積のリスクをもつため、無制限にひろがることはできない。つまり、どちらの志向によっても、回路としての貨幣は局地的なまとまりをもとうとするものなのである。超地域的な貨幣通用を成り立たせるためには、これらの志向を制御する仕組みが必要となる。
 (二)三位一体のごとく貨幣の機能とされる、流通手段、価値尺度、価値蓄蔵手段、の間には必ずしも親和性がない。ことに、供給が有限で第三者への譲渡を前提とする通貨(流通手段)と、無限の取引額に対応し取引者同士の相対を基にする記帳(価値尺度)とは、相対立する機能といえる。整合しないこれらの機能をどう組み合わせるかにより貨幣システムに個性が生じる。
上記の二つの視角から世界規模の比較をする国際協同研究を、現在私は組織しようとしているところである。


通貨の国内統一そして域内統一が、人類規模ではより大きな格差と不公平をもたらしているのなら、誰のための取引費用軽減なのであろうか。貨幣の地域性と超地域機能との間の根源的矛盾を論じる本書に、今日の大きな問題につながる意味をみつけてくださる読者も多くなっているのではないかと、ひそかに期待するところである。


現在の通貨制度がかかえる様々な問題点を人類の過去の歴史をふまえて整理、分析、考察し、より理想のあるべき国際通貨制度を構築するヒントをさぐり、提示しようとされておられるようです。

この著者の意図の発展を長い目で期待したいと思いました。






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2020年01月22日

メインバンクの投資セミナー参加録(第二回)

昨日、私のメインバンクである三菱UFJ信託銀行の投資セミナーに行ってきました。

参加は通算2回目です(1回目は昨年の7月18日で、レポート記事はコチラ)。

時間は全体で1時間半であり、途中、休憩の5分間を挟んで前半が資産運用の一般論、後半がファンドラップの運用報告と2020年の世界経済の見通しが語られました。

出たものは、ペットボトルお茶、ボールペン1本、各種資料でした。


ここでは、2020年の世界経済見通しについて紹介したいと思います。

2020年のメインシナリオは、おおむね堅調に推移するだろうというもの。

すなわち、株高、債券安、ドル高・円安です...

世界経済を牽引するアメリカ経済は、中期的にはやや陰りが見えるものの、短期的には製造業景況指数の好転が予想され、両者の要因の綱引き状態に...

また、世界の債権(国債)のうちアメリカを除く各国とも金利はゼロかマイナスであり、ほぼアメリカのみが約1.8%の金利を付けていることからも、アメリカに世界中の余裕資金が流れ込む傾向は止まらないとのこと。

日本経済については、東京オリンピック後の景気後退は、前例(1992年のバルセロナ〜2012年のリオまで)を見ると心配ない状況だとのこと。

ということは、やや上げ相場なのかなぁ〜...

戦略としては、一時的に下がったところで拾って、上がったところで手放すことを繰り返すスイングトレードかなぁ...

そんなふうに聞いていて思いました。







P.S.
投資はあくまでも自己判断と自己責任でお願いします。
上記の記述は私の個人的見解であり、何も保証するものでもありません。




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2019年11月11日

三橋貴明著『ニュースに騙されない!日本経済の真実』を読んで

三橋貴明著『ニュースに騙されない!日本経済の真実』を読みました。

著者は東京都立大学経済学部卒で一般企業にも勤務した経験のある経済評論家です。

既存の評論にとらわれず、自分の頭で考えた経済認識をこの本のなかで語ってくれていました。

ニュースに騙されない! 日本経済の真実
ニュースに騙されない! 日本経済の真実

著者が特に批判しているのがアメリカ発の新自由主義やグローバリズムで、それを日本に導入しようとしている竹中平蔵元大臣の路線にノーをつきつけています。

また、豊富なデータをふまえたり国際的な経済議論も参照して持論を展開しているので説得力もありました。

以下、著者の主な主張を表している箇所を紹介してみます。

イギリスの経済学者であるロバート・スキデルスキー氏は、自著の『なにがケインズを復活させたのか?―ポスト市場原理の経済学(山岡洋一訳、2010年 日本経済新聞出版社)』の序章において、「最近、圧倒的な力を持っていた新古典派経済学がどれほどの害悪を与えたかは、簡単には記せないほどである。歴史上、これほど奇妙な人達が熱中した例はまずない」と、書いている。
信じがたい話だろうが、現在の世界経済の混乱、日本の長引くデフレ、リーマン・ショック、ユーロの混乱、ギリシャやスペインの異常に高い失業率、アメリカの格差問題の「1%対99%」の争いなどは、すべて主流派の経済学が間違っていることに起因している。


インフレ目標は、あくまで2%に設定する必要があるのだ。なぜだろうか。理由は、フィリップス曲線だ。……(中略)……日本のフィリップス曲線は、実に美しい姿をしている。……(中略)……日本国は、GDPデフレーターベースのインフレ率が2%に上昇すると、失業率が2%台前半に下がる。


日本のように美しいフィリップス曲線が描ける国はそう多くはない。
アメリカの場合、インフレ率が上昇(需要過多)しても、外国からの輸入で対応してしまうため、国内の雇用環境が改善しにくいのである。アメリカの貿易赤字がどれだけ膨らんでも、生まれるのは「外国の雇用」にすぎない。


「少子化だからデフレ」が正しいならば、日本は少子化が継続する限り、延々と物価が下落を続けるという話になってしまう。すなわち、インフレには決してならないわけだから、通貨発行し放題である。日本政府は支出のすべてを日銀の通貨発行で賄い、無税国家になれてしまう。
現実には「デフレだから少子化」が正しいのだが、因果関係を逆さまにして「でたらめ」を平気で主張する論者が後を絶たないわけだ。


コンクリートから人への「人」は、ずばり社会保障である。公共投資を減らし、社会保障を増やすことこそが「コンクリートから人へ」なのだ。……(中略)…… コンクリートから人へとは「将来世代のことなどどうでもいい。今の自分にカネをよこせ」という思想なのである。


自民党の安倍晋三総理の「日本銀行の建設国債買い入れと、政府の財政出動による国土強靭化(公共投資)」という主張は「デフレ対策」としては完璧に正しい。


日本の公共インフラは、主に高度成長期に建設された。橋梁などの公共建造物は、別に無限に使えるわけではなく、建造後およそ50年経つと、大々的なメンテナンスが必要になる。
高度成長期から50年後といえば、いつになるだろうか。ずばり2010年代、すなわち「今」なのだ。


何しろ、わが国の政府は橋本政権以降、小渕政権、麻生政権という二つの例外を除き、毎年、自民党政権も民主党政権も、共に公共事業費を減額してきた。結果、わが国の建設事業者はピーク期からすでに20%も減ってしまった。


見ての通り、民主党政権時代の緊縮財政も消費増税路線にも反対で、デフレ反対・リフレ賛成、アベノミクス肯定、公共投資賛成の立場です。

きわめて妥当なものの見方だと思います。

また、日本国債の発行残高と日本の財政破綻の問題についても、真実をキチンと突き、欺瞞を暴いています。

日本は世界に約700兆円のおカネを貸し付けている(日本の対外資産が約700兆円)。それに対し、世界は日本に398兆円貸している(日本の対外負債が398兆円)。すなわち、現在の日本は世界に対し、301・3兆円(=699・3兆円―398・0兆円)の対外純資産状態にある。……(中略)…… 日本の外純資産額301兆円というのは世界最大だ。……(中略)…… 日本は「国家」としてみれば借金大国どころか、世界最大のおカネ持ち国家なのである。


日本政府は国債の償還(返済)不能などのデフォルトに陥ることは「できない」。財政破綻「しない」のではない。財政破綻「できない」のであるから、誤解しないでほしい。


たとえ日本政府の信用が凋落しても、日本銀行が金融市場の国債を「買い占める」と、銀行は手元の日本円を政府に貸し出さざるを得ない。すなわち、日本国債が買われることにより、国債金利は低迷する。
というわけで、日本政府が過去に発行した国債が100%日本円建てであり、かつ「子会社」の日本銀行が国債を買い入れることができるため、わが国は「政府の財政破綻」「政府の債務不履行」に陥りたくても陥れないのである。


わが国の政府の債務は100%が日本円建てだ。「子会社」である日本銀行に国債を買い取らせれば、返済負担や利払い負担が消滅する政府の負債をことさらにクローズアップする財務省は、やはり「単に増税をしたいだけ」としか思えない。


本当に公共事業のやりすぎで国債発行残高が積み上がっているならば、増えているのは建設国債でなければならない。だが、現実に増えているのは、税収不足を補うために発行される赤字国債だ。


残念ながら消費増税は先月に行われ、今年多く発生してしまった台風被害にもかかわらず公共投資はいまだ活発には行われていませんが、著者も言う通り、豊富な日本の対外資産やまだまだある民間余力を活かすような政策の道すじが付けられ、今後、日本経済が良い方向へと向かうことを祈りつつ、こういう正しい経済認識が広まってゆくことを希望したいと考えます。






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 ☀| Comment(0) | 投資情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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