2017年04月08日

『石油を読む〈第3版〉』の感想...

『石油を読む〈第3版〉』を読みました。

石油を読む〈第3版〉 (日経文庫) -
石油を読む〈第3版〉 (日経文庫) -

著者は資源エネルギー庁や内閣官房に在籍していた石油の専門家です。

20世紀以降の石油取引の歴史から、現在の石油市場や国際政治関係まで、初心者にも非常にわかりやすく説いてくれています。

以下、参考になる箇所をいつくか引用したいと思います。


2015年7月17日付の英エコノミスト誌は「シェール企業の総債務は年間売上高の6倍に達しており、財務状況はギリシャ並みとなっている」と指摘したが、その状況はまったく変わっていない、いや、むしろ悪化している。


シェール企業が大量破綻すればその救済コストは多額に上る可能性があるが、米国以外の他の金融市場にも悪影響が及ぶ可能性が高い。シェール企業のジャンク債やシェール企業関連CLOを世界中の投資家が保有しているからである。


原油価格が1バレル=60ドル以上になれば、「短期の生産者」であるシェール企業が大増産するため、「60ドル」が上限となるのではないだろうか。


今回の合意のアウトラインは以下のとおりである。
@OPECの減産期間は2017年1月から半年間(半年間延長する可能性ある)


欧米企業から接収した石油権益をベースに1980年に国営化されたサウジアラムコは、国内に100カ所以上の油田を保有し約6万人の従業員を要する巨大企業である。サウジアラムコの原油生産量は世界全体の12%を占め、確認可採埋蔵量でも世界全体の約15%に当たる約2665億バレルを保有している(米エクソンモービルの約10倍)。


サウジアラムコの時価総額は約2兆ドルと言われ、サウジアラビア政府はその5%分を2018年に公開するとしているが、それでも市場から集まる資金は1000億ドルに上る。


30万トン以上の石油タンカーで輸送する場合、その輸送費は地球を半周しても現在の石油価格(1バレル〈159リットル〉=約50ドルの場合)の2%(1バレ=約1ドル)にすぎない。・・・(中略)・・・いつでも地球の反対側からさしたるコスト増なしに大量に原油を購入できるのである。


1980年半ば以降は、価格をコントロールできる国際カルテルは存在していないのである。OPECの国際石油市場における生産シェアは現在約3分の1となっており、近い将来そのシェアが大きく上昇する見通しもない。


次にメジャーである。その国際カルテルの絶頂期であった1960年代には世界の原油生産シェアの7割近くをおさえていたが、現在全社合計してもそのシェアは1割台にすぎない。


OPEC加盟国の原油販売価格はすべて、ニューヨークやロンドンの先物価格をベースに毎月決定されており、産油国が勝手に価格付けすることは、市場との力関係で事実上不可能である。


国際石油市場の変動幅が大きくなっているもう一つの理由は、国際石油市場の実需給動向(ファンダメンタルズ)がリアルタイムに把握できないことにある。生産量はもちろん、消費量も生産量以上に実態を把握することが困難であるため、市場関係者の間では石油消費国内の在庫水準がしばしば取引材料として使われている。


国際石油市場には、致命的な「情報の不完全性」が生じている。それゆえ投機を呼びやすく、群集心理が発生しやすいため、原油価格は大きく変動するようになったのである。


いったん価格が落ちだすと、生産者は収入を維持するためにさらに増産し、ますます価格が低下するという悪循環となり、再生産投資が困難な水準にまで価格は低下する。


1990年代まで中東地域の原油の7割が欧州諸国で消費されていたが、それ以降は中東地域の原油の7割がアジア(特に日中印韓)で消費されており、この傾向はますます顕著になっている。


大手石油会社は、すでに上流事業の売り上げ、または収益の40%を天然ガスであげており、単に「石油会社」と位置づけるのは時代遅れである。


人類がこれまで使ってきた各燃料資源の水素対炭素の比率は、木材1:10、石炭1:1、石油2:1、天燃ガス4:1である。この意味から天然ガスは人類がたどり着いた究極の化石燃料であると言えよう。


LNG(液化天然ガス)が44%、石炭が32%、石油等が9%となっており、今や日本の電力の主力燃料源はLNGとなった感が強い。


天然ガスは、リーマン・ショック後の世界経済の低迷の影響で原油に対して割安で取引されている。原油の需要は、運輸用などが中心で景気の影響を受けにくいのに対し、天然ガスの需要は産業用が多いため景気の影響を大きく受けるからである(熱量単位で比較すると100万BTU当たり3ドルの天然ガスは1バレル当たり18ドルの原油と同等である)。


パイプライン網を持たない日本は供給者需要者が集まって価格が決まるというオープンな「場」が存在しないため、LNG輸入価格は原油価格にリンクして決まっている。このことは原油価格が急騰すればそれに連動してLNG価格が高騰することを意味する。燃料価格が安定しないがゆえに、日本で天然ガスがベースロード電源(安定的に低コストで供給できる電源)に位置づけられていないのは残念である。


プーチン大統領は年1回、各国の学者・専門家を招くバルダイ・クラブという催しを開いている。下斗伸夫法政大学教授はこれに7回も参加しており、最も多くプーチン大統領と面会した日本人の一人である。


エネルギー問題分析の世界的権威であるダニエル・ヤーギン氏は2015年1月17日付の日本経済新聞のインタビューで「安部首相は安いエネルギーで経済を活性化する政策を『4本目の矢』として推進すべきではないか」と提案しているが、「サハリン天然ガスパイプライン構想はその重要な柱となる」と筆者は確信している。


パイプラインが敷設される沿線都市(旭川市や札幌市など)で熱電供給網が整備されれば北欧並みの快適な生活が実現し、北海道経済の発展に大きく寄与することになるだろう。



まとめると、
・短期的には石油は1バレル=60ドルが上限か。
・原油価格は、投機的に決まりやすい。
・OPECを中心とした減産合意は7月まで。それ以降は不透明。
・サウジの国営企業のサウジアラムコの株が一部公開されると世界中の投資資金がそこに吸い寄せられる恐れがある。
・暖房用燃料は天然ガスというのが全世界的にはポピュラー。
・天然ガスは、いったん液化するLNG方式ではなく、パイプライン方式で供給するとコストが大幅に安くなる。
・サハリン→北海道→本州へとパイプライン方式で天然ガスが供給されるようになれば、日本の生活事情や経済は大きく変わるだろう。
・シェールガス業者が大量破綻すれば、リーマンショックの再来となるだろう。

こんな感じでしょうか...

非常に有意義な情報だと思いました。





P.S.
投資はあくまでも自己判断と自己責任でお願いします。
上記の記述は私の個人的見解であり、何も保証するものでもありません。






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2017年03月29日

アサヒグループHDの株主総会に出席

昨日はアサヒグループホールディングスの株主総会に出席してきました。

場所は紀尾井町のホテルオークラでした。

13時から15時すぎまで、約2時間に渡って行われました。

入るとき、議決権行使書と引き換えに、アンケート用紙と入場者証とおみやげ引換券と十六茶の紙パックを渡されました。

ホテルの大会場で開催され、映像を駆使した華やかな総会でした...

主要な商品などを紹介したビデオも流されました...

ビデオを見ていて、また経営層の説明や株主との質疑応答を聴きながら、
事業内容は堅実で、消費者の根強い支持があり、世の中の経済の成長とともに成長し、不況にも強そうな、いわゆる「バフェット好みの銘柄」かもしれないなぁと改めて思いました。

私はすでに売り払ってしまってますが、持てるなら長期保有をおススメしたい銘柄です。

帰りにはおみやげをもらいました。

内容はこんな感じ...

asahighd.jpg

キリンビールも保有している株主さんから、「キリンはおみやげを廃止したのに対し、たいへんありがたい」という声も飛んでいました。

確かにそうですね...

出席するのに交通費もかからない私のような東京在住の株主にはホントありがたいです。






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2017年03月22日

倉山満『自民党の正体』を読んで...

倉山満著『自民党の正体』を読みました...

戦前の日本の政党政治から説き起こし、旧大蔵省(現財務省)やアメリカそしてソ連や中国との関係もふまえつつ、自民党の政治史を著者自身の視点から記した名著です。

この著者の他の著作も実はいくつか読んでいるんですが、太平洋戦争は大蔵省の協力がなければ予算面で実行できなかったとか、自民党政治が迷走してからも財務省が一貫性を保っていたから何とか日本の政策に一貫性があるとか、一理あると思われる指摘がされています。

自民党の正体 -
自民党の正体 -


戦後の日本の政治はGHQ(占領軍)の施策から始まりますが、そのGHQは、GSとG2との間に思想の違いと派閥争いがありました。

このことはぼんやりながら私も知っていましたが、改めて情報を整理して理解できました。

日本を赤化して弱体化したいGSと、冷戦の高まりを受けて日本を反共の砦にしたいG2の勢力争いに、日本の政治が振り回されていたのです。


マッカーサーは、GSの口車に乗って共産党と日教組と自治労を育ててしまい、日本国憲法などという邪魔なものをつくってしまったことを死ぬほど後悔する羽目になります。


昭和一二年(一九三七)の林銑十郎内閣による「食い逃げ解散」のときに、民政党の議席を社会大衆党が大幅に食ってしまったのが原因です。この選挙で社会大衆党が取ったのは三六議席で、平成二六年(二〇一四)現在の公明党の議席数を上回ります。これが戦後の社会党の源流になり、いまだに響いているのです。


戦後政治の悲劇を招来した罪を林銑十郎一人に押し付けるわけにはいきません。戦後急激に伸びた革新層は、林銑十郎が戦前に蒔いたタネをGHQが大きく育てたものだからです。


そして、旧社会党や共産党が冷戦時代にソ連から援助を受けていたことはかなりの人が知っている事実ですね...

結局、アメリカは冷戦下で日本の左翼・革新勢力を弱めようとします。

社会党が割れて民社党が結成されています。結党にあたってCIAが資金を出したことはもはや明らかになっていますが、もし民社党が順調に育っていれば保守二大政党制ができた可能性がありました。


こういった国際情勢に日本の政局が翻弄される中で、戦後日本を支えたのは三つの役所でした。

本物の三権は、立法は「内閣法制局」、司法は「検察庁」、行政は「財務省(旧・大蔵省)主計局」が握っています。


法制局と検察庁は「拒否権」しか持っていません。ですから、基本的に表に出てくることはありません。拒否権とは「政治家や他省庁がやりたいことを妨害する力」のことです。一方、大蔵省主計局は「推進力」、すなわち政策を立案して実行する力を持ち合わせています。


大蔵省は、「コミンテルンが敵だ」と思っている唯一の役所でした。


つまり、戦後の自民党政治の成功と高度経済成長の達成は、反ソ連の大蔵省の書いた絵図に自民党の有力政治家がのっかったのが原因ということ。この事実を著者はわかりやすく描いています。

その代表的なものが、戦後昭和における田中角栄に代表される利権誘導政治なわけです。

大蔵省主計局から予算を引っ張ってこられるということが田中派の権力の源泉でした。身も蓋もないことを言えば、子分たちを選挙に当選させるためには予算を引っ張ってきて選挙区に利益誘導できなけれいけませんし、選挙で当選させられるから予算を引っ張ってこられるという循環をぐるぐる回すことで派閥を拡大していっています。


族議員というのは別に法律や行政に詳しいわけではなく、業界との利益調整をして大蔵省主計局から予算を引っ張ってくるのが仕事です。


こうなってくると、なかには歳入を増やし財政均衡を果たしたい大蔵省にすり寄る政治家も出てきます。

三角大福のうち、増税派は大平だけで、今の財務省の増税原理主義者の元祖が大平です。


大蔵省にとって頼みの綱が大蔵族の大平正芳でした。そして、大平は健全財政を守ろうという責任感から増税に走ってしまうのです。


また、自民党の政治家の政治力があまりにも強くなりすぎて大蔵省の言うことをきかなくなると、大蔵省は政治に干渉することもします。

竹下に田中派打倒の期待を込めて大蔵省が接近します。鈴木・中曽根内閣の間に田中派支配があまりにも強くなり、他派閥が結束して倒すのはもはや不可能でした。


総裁選に出るまでの小泉は、政府の主要閣僚を一度もやったことがなく、党三役に就いたこともありません。しかし、根っからの大蔵族で、国会ではずっと大蔵委員会に所属し続け、大蔵委員長や大蔵省政務次官もやっています。


竹下登や小泉純一郎が総理大臣になれたのは、大蔵省が味方についたからという...

そして、日銀人事についても...

福田内閣の重要な天王山は、日銀人事でした。これも残念ながら、親中派に敗北しました。


白川は断固としてデフレを維持し続けることになります。この白川の下で、次の麻生内閣のとき、日本はリーマン・ショックに見舞われ、地獄を見ることになるのです。


中川の後任が増税原理主義者の与謝野馨です。


福田の場合、増税派の与謝野とリフレ派の中川秀直の両方を頼っています。
(中略)
麻生は違います。白川とはマブダチで、人脈も政策も与謝野馨路線です。


なお、財務省(旧大蔵省)でも路線の違いがあるようで、

三党合意に従って増税法案が可決されると、その直後、勝栄二郎財務事務次官は退職しました。大蔵元老院による「肩たたき」です。勝に代わって真砂主計局長が財務事務次官に就任しました。この人事はのちに日本を国家崩壊から救うことになります。


財務省には「地球が滅びても増税」の増税原理主義派と、「増税で日本が滅びてはまずいだろう」という増税派がいます。真砂靖事務次官は明らかに後者の意味での増税派でした。三党合意の直前から、安住財務大臣の答弁が以前とは違って増税原理主義でなくなり、特例公債法案の可決に全力を尽くすようになっています。財務大臣への財務官僚のレクチャーの内容が明らかに変わったのです。


歴代総理大臣が、日銀総裁・速水優、福井俊彦、白川方明に膝を屈してきました。安部は、その巨大な敵に敢然とぶちあたっていったのです。



著者の説くところは、戦後から現在にかけての日本経済というものは、自民党と財務省(旧大蔵省)を主役として、アメリカとソ連・中国の干渉を脇役として展開してきたのだと言うことです。







posted by スイス鉄道のように at 09:00| 東京 ☔| Comment(0) | 投資情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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