2020年08月09日

『23区大逆転』を読んで...

池田利道著『23区大逆転』を読みました。

東京23区の経済、文化、住民などについての詳細な情報に基づき23区の近未来を描いた本です。

23区大逆転 (NHK出版新書 528) - 池田 利道
23区大逆転 (NHK出版新書 528) - 池田 利道

著者はかつて東京都政調査委員も務めた東京都の情勢に詳しい分析屋さんです。

この方の著書は初めてでしたが、一作目の『23区格差』も読んでみたいと思いました。

それくらい各区のカラーが浮き彫りにされていて魅力的ですし、東京在住者として参考になる情報が盛りだくさんですので。

そして、地方在住で地域の問題に取り組んでおられる方にも参考になると思います。というのは、ある意味、東京23区もまた”地方”であって、少子高齢化や福祉に町おこしをはじめ、似たような問題を抱えており、その解決に知恵と工夫で尽力している姿も書かれているからです。

また、地方から東京へ移住を考えておられる方にも有意義な内容になっています。なぜなら、自らのニーズにあった区を選ぶ際に参考になるからです。

そんな重宝する一冊から、例によって、目を引いた箇所を抜き出してみたいと思います。

じつは東京23区への総転入者に占める地方圏から転入してきた人の割合は、わずか4分の1強である。一番多いのが「23区内の他区から」の36%で、次が「23区外の首都圏から」の30%。……(中略)……メディアは、人口の増減だけを見て「東京のひとり勝ち」だと煽り立てるが、実際にそこで起こっているのは首都圏内、23区内での人口の奪い合いであり、さらに東京から地方への大きな人の流れも存在している。

人の流れとしては、地方から東京への流入者だけでなく、都内での住み替えもあり、東京から地方へ出て行く人もいる。多種多様が実勢なわけで、そこにあるのは、住みやすさや生活ニーズを求めての自由な人の移動のようです。”東京一極集中”といった単純な構図ではないようですね。


門前仲町や東陽町の一帯には、行列ができるほど安くて、おいしくて、家庭的なサービスを提供してくれる飲食店も数多く集積している。……(中略)……ステータスを度外視して都心の周辺にまで目を向ければ、高所得ではなくても都心ライフ同様のメリットを満喫できる場所が、じつはたくさんある。そう人々が気づいた時、限られた人たちだけに許されていた新たなライフスタイルの実践を可能とする選択肢が大きく広がることになった。台東区や江東区の内陸部で始まり出したこの動きを、「下町ライフ」と言ってもいい。見栄を張らずに実利を優先するのは下町のDNAそのものだからだ。

都心回帰という現象が少し前から始まりましたが、門前仲町や東陽町といった江東区や、あと台東区といった下町ライフを求めての人の移住が大きく、単純にリッチな人がなんとかヒルズなどのリッチな場所へ移っているのではないのだということ...


西部山の手地区の住宅開発を先導した鉄道会社や地元自治体などによる取り組みは、理想のまちづくりを実現しようという高い理念に支えられていた。しかし、周辺の小規模な開発まで、その理想を徹底させることはできなかった。
商品である住宅の敷地は然るべき規模が確保されたが、道路は曲がりくねったかつての畦道をそのまま再利用した。世田谷名物の一方通行路はこうして生まれたものだ。……(中略)……一方、埋め立て造成という土木工事が必要だった東部地区の住宅地開発では、道路や公園の整備が公的に担保される形で進んだ。

機能性に劣ると言わざるを得ない商店街が現役で残り続けている背景には、地元の人たちが商店街に地域ネットワークの結節点という価値を見出し、評価している思いがあるからにほかならない。世田谷区は、小田急線、京王線、田園都市線の駅前に、まさに各駅停車で活力みなぎる駅前商店街が並ぶ。

憧れの場所のイメージのある西部山の手地区は意外と生活インフラ(とくに道路や公園)などが貧弱で、むしろ低湿地が多かった東部下町地区のほうが計画的に整備されたというのが歴史的事実。東部下町には激安スーパーも多く、一方、西部山の手地区は零細な商店が並ぶ商店街が多いとのこと。


下町・東部地区には「ご近所パワー」という頼もしい子育ての味方が存在する。

江戸川区は、3世代同居世帯の割合が2位、ひとり暮らし高齢者の割合が低いほうから3位、25〜44歳の未婚率は最低。23区の中でもピカ一の「家族力」を誇る。

江戸川区で「家族力」がまちのDNAとして共有されていることを象徴しているのが保育ママの活躍である。保育ママは保育施設の整備が遅れる中で、一種の弥縫策として登場してきた。

保育ママは、2010年には「児童福祉法」の中に位置づけられ、2015年以降は地域型保育事業のひとつとして認可保育サービスの中に組み込まれるようになる。江戸川区の他にも、足立区、板橋区、練馬区、荒川区、大田区、世田谷区、墨田区、葛飾区など、下町・東部地区を中心に保育ママの存在が子育て支援の重要な戦力となっている。

東部下町地区では子供を守り育てる文化が今でも生きており、家庭を持つなら西部山の手地区よりも東部下町地区のようです。

他にもいろいろと参考になる情報がてんこ盛りです。

ぜひ一読をおススメしたいと思います。






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2020年08月04日

法律系マンガ『カバチタレ3』第28巻を読みました

マンガ『カバチタレ3』第28巻を読みました。

このブログでも過去に何回か取り上げているリーガル系の漫画です。

カバチ!!! −カバチタレ!3−(28) (モーニングコミックス) - 田島隆, 東風孝広
カバチ!!! −カバチタレ!3−(28) (モーニングコミックス) - 田島隆, 東風孝広

この漫画シリーズの良きところは、1巻ごとに物語が完結してくれることです。続きを心配する必要がないのがありがたい...

今回の事件は、ふざけた大学生がアルバイト先の引っ越し業者の作業のなかで引っ越し者のプライバシーをスマホで撮影してそれをアップロードしたこと。

それで炎上して、各所に迷惑をかけ、引っ越し業者の顧問である行政書士が問題の解決に乗り出すというストーリーです。

法律上は因果関係の証明が難しく、加害者(大学生アルバイトたち)を訴えるどころか、警察もまともに取り上げない始末...

そんな中、行政書士たちは、大学側に訴えるという線で話しをまとめていきます。

結果、やっぱり、”正義は勝つ”ということで落着。

教訓としては、過ちを犯す側からの視点としては、「法律に触れないから大丈夫」ないし「法律では裁くのが難しいから大丈夫だ」などと思ってはならないということ。

所属する組織のルールや組織の利益を守るという観点から、組織内規約によって裁かれる恐れがあるということ。

被害者側の視点としては、法的に訴えることはできない、ないし、困難であっても、ある程度の確証をもって加害者が属する組織の責任者へ話をもっていけば、民事的な交渉によって有利に問題が解決する可能性があること。

この2点でしょうか、第28巻が語ることとしては...

電子書籍化されていますし、お家のなかで読むリーガル系のエンターテインメントとしてすぐれものです。

おススメの一冊でございます。






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2020年07月22日

テリー伊藤著『お笑い大蔵省極秘情報』を読んで...

テリー伊藤著『お笑い大蔵省極秘情報』を読みました。

タレントのテリー伊藤氏が、財務省がまだ「大蔵省」と呼ばれていた1996年に書いた本です。

お笑い大蔵省極秘情報 - テリー伊藤
お笑い大蔵省極秘情報 - テリー伊藤

当時、大ベストセラーになったそうですが、その評判通りに面白い!

読んでタメになることもたくさん書いてあり、今まで読んでなかったのが残念に思う名著でした。

百聞は一見に如かず、いや一読に如かずなので、例によっていくつか興味深い箇所を引用してみますね。

大蔵 われわれは突然エイリアンとして出てきたわけじゃない。まず下に国民があって、その上に政治家がいて、その上に大蔵官僚がいる。
テリー いや、だって、日本の憲法だと、国民の投票によって選ばれた国会議員が立法府として立場的には上のはずでしょう。
大蔵 それは建て前。すべて建て前です。


大蔵 大蔵省の主計局の人間というのは、大蔵省のことだけじゃなくて、主査として、あるいは主査のまわりにいるスタッフとして、防衛庁担当なら、例えば、90式戦車の砲身の長さが何ミリで、大砲はどれくらいの威力で、ロシアにとってはどれくらいの脅威か、そこまで全部知ってる。


大蔵 日本の社会にとっては、とにかく予算をぶんどってくれる代議士、というのが大事なんですよ。天下国家を多少なりとも言えるのは東京ぐらいであって、地方では予算を取ってくれる人間がすべて。予算を出すのは誰ですか。大蔵省だけですよ。だから大蔵省に嫌われる代議士は、絶対選挙で勝てない。100パーセント勝てないといってもいい、東京以外では。東京だけは浮動票で勝てるけれども。


テリー 住専も考えてみれば国民の責任だというんですか!
大蔵 国民の責任そのものですよ。だって総量規制で住専だけ外してくれというのは、住専からローンを受けたい人がまだいっぱいいたからですよ。総量規制しちゃって、銀行からは金が出ません。ところが家は建てたい。


大蔵 怖い相手のいない最大の理由は、大蔵省が日本最大の情報機関だということなんです。


財務省(旧・大蔵省)が確定申告や税務調査権によって、いかに国民の生活の実態面を把握しているとともに、防衛省はじめ他官庁の予算を詳しく綿密にも把握することで国家運営の実態までもすみずみまで知っている...

それを東大法学部のトップクラスの秀才たちが把握している...

だから政治家たちは彼らに歯が立たないということが如実に記されておりました。

その他、小沢一郎氏の持つコンプレックスや氏の官僚との接し方の実態なども暴露されていました。小沢氏があるときから権威を失ったのは、この本のせいかもとも思いました。

日米間のカネのやりとりにまつわるブラックっぽい話しなんかもありました。

日弁連やマスコミさえも財務省にしっぽを握られているとも...

これは全日本国民にとって必読の書ですね、20年以上たった今でも有用な情報がたくさん載っています。

おススメの一冊でございます。







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