2020年10月18日

吉田敏浩著『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』を読んで

吉田敏浩著『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』を読みました。

米軍統制の空域である「横田空域」を主テーマに、戦後日本のアメリカとの関係性に踏み込んでくわしく解明した本です。

内容をひとことで表わした一文を引用して紹介しますと、
亡くなった翁長雄志元沖縄県知事が生前、鋭く指摘していたように、「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」というのが、まさに日米関係の実態なのである。

ということだそうです。

9月4日の記事9月14日の記事で紹介した矢部宏治氏の著作のなかで触れられていたので触発されて読みました。

横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁 (角川新書) - 吉田 敏浩
横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁 (角川新書) - 吉田 敏浩


著者は、この本の最初の方で横田空域を紹介するとともに、日米密約一覧を提示しています。

驚くべき密約の数々は、わかっているだけでも以下のとおりである。
@「民事裁判権密約」(一九五二年)米軍機墜落事故などの被害者が損害賠償を求める裁判に、米軍側は不都合な情報は提供しなくてもよく、そうした情報が公になりそうな場合は米軍人・軍属を証人として出頭させなくてもいい。
A「日本人武装警備員密約」(一九五二年)基地の日本人警備員に銃刀法上は認められない銃の携帯をさせてもいい。
……(中略)……
G「航空管制委任密約」(一九七五年)「横田空域」や「岩国空域」の航空管制を法的根拠もなく米軍に事実上委任する。
H「航空管制・米軍機優先密約」(一九七五年)米軍機の飛行に日本側が航空管制上の優先的取り扱いを与える。
I「嘉手納ラプコン移管密約」(二〇一〇年)「沖縄進入管制空域」の日本側への移管後も、嘉手納基地などに着陸する米軍機をアメリカ側が優先的に航空管制する。
一読してわかるように、これらの密約は、日本の主権を侵害し、憲法体系(憲法を頂点とする国内法令の体系)を無視して、米軍に事実上の治外法権を認めるものだ。


そして、東京都の横田空港の驚くべき実像をこう書くのです。

「横田空域」を管理する米軍横田基地は、東京都の福生市、羽村市、瑞穂町、武蔵村山市、立川市、昭島市にまたがっており、総面積は約七・一四平方キロ(東京ドーム約一五〇個相当)と広大である。
三三五〇メートルもの滑走路があり、米空軍の第三七四空輸航空団という部隊が配属されている。アメリカ本土、ハワイ、グアム、日本、韓国などにある米軍基地の間を、兵員や物資を乗せて行き来する大型輸送機(C5やC17など)などの中継拠点だ。すなわちアジア・西太平洋地域での軍事空輸のハブ基地である。


いやあ〜、ビックリですね...
東アジア最大の巨大空港機能が東京のすぐ間近にあるなんて...

米軍は在日米軍基地に、アジア・太平洋地域から中東までも睨んだ航空戦力を前方展開させて配備している。米軍にとって、前方展開した航空部隊がいちいちアメリカ本国までもどって低空飛行訓練などをおこなうのは、効率が悪い。時間も燃料も余計にかかり、パイロットの負担も増える。配備先の日本で訓練するほうが効率的なのである。


二〇〇三年のイラク戦争では、当時、横須賀基地を母港としていた米海軍の空母キティホークがペルシャ湾に出動した。空母艦載機のFA18戦闘攻撃機などが、計五三七五回も出撃し、約三九〇トンもの爆弾を投下して、多くのイラク人の命が奪われた。


米軍パイロットは日本の空で操縦・攻撃の技能、すなわち戦技を磨いて、戦場におもむき、激しい空爆を繰り返したのである。
イラク戦争では三沢基地と嘉手納基地の米空軍のF16戦闘機やF15戦闘機なども出撃した。日本各地の低空飛行訓練ルートがやはり米軍パイロットの戦技向上のために使われている。
横須賀基地からは巡洋艦カウペンスと駆逐艦ジョン・S・マケインもペルシャ湾に出動し、計七〇発のトマホーク巡航ミサイルを発射した。


”世界の警察官アメリカ”をリアルに実現させているのが在日米軍とその基地であり、単なる二国間同盟ではないことがこの本を読むとはっきりとわかります。

さまざまな密室的取り決めが米軍高官と霞ヶ関の官僚たちとのあいだで取り決められ、その結果、アメリカの世界戦略上の重要なピースを在日米軍基地が担ってもいるわけですが、それが日本国民の目に見えないようにされているのは重要な日本政治上の課題だといえます。

しかし、最近は情勢が変わってきているようです。

二〇一八年七月には全国知事会が初めて、地位協定の抜本的見直しを求める提言を発表し、日本政府に要請するという、画期的な動きも見られた。


全国知事会は二〇一六年七月に、故翁長雄志元沖縄県知事の強い要望を受け、一二人の知事からなる「全国知事会米軍基地負担に関する研究会」を設け、二年間で六回の会合を開くなど調査・研究を重ねて、同提言をまとめた。


保守的で大きく変わりばえしないと言われてきた戦後の日本の政党政治ですが、今後国政をもし変えていくとすれば、この全国知事会なのではないでしょうか。

コロナ禍でも各知事は国政側と渡り合っていろいろと発信もし、コロナ対策もさまざまな工夫が見られましたし。

最後にまとめますと、在日米軍とその基地問題から新たな視点が見えてくるような気がしました。






posted by スイス鉄道のように at 11:00| 東京 ☁| Comment(0) | 気づき・ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月09日

『23区大逆転』を読んで...

池田利道著『23区大逆転』を読みました。

東京23区の経済、文化、住民などについての詳細な情報に基づき23区の近未来を描いた本です。

23区大逆転 (NHK出版新書 528) - 池田 利道
23区大逆転 (NHK出版新書 528) - 池田 利道

著者はかつて東京都政調査委員も務めた東京都の情勢に詳しい分析屋さんです。

この方の著書は初めてでしたが、一作目の『23区格差』も読んでみたいと思いました。

それくらい各区のカラーが浮き彫りにされていて魅力的ですし、東京在住者として参考になる情報が盛りだくさんですので。

そして、地方在住で地域の問題に取り組んでおられる方にも参考になると思います。というのは、ある意味、東京23区もまた”地方”であって、少子高齢化や福祉に町おこしをはじめ、似たような問題を抱えており、その解決に知恵と工夫で尽力している姿も書かれているからです。

また、地方から東京へ移住を考えておられる方にも有意義な内容になっています。なぜなら、自らのニーズにあった区を選ぶ際に参考になるからです。

そんな重宝する一冊から、例によって、目を引いた箇所を抜き出してみたいと思います。

じつは東京23区への総転入者に占める地方圏から転入してきた人の割合は、わずか4分の1強である。一番多いのが「23区内の他区から」の36%で、次が「23区外の首都圏から」の30%。……(中略)……メディアは、人口の増減だけを見て「東京のひとり勝ち」だと煽り立てるが、実際にそこで起こっているのは首都圏内、23区内での人口の奪い合いであり、さらに東京から地方への大きな人の流れも存在している。

人の流れとしては、地方から東京への流入者だけでなく、都内での住み替えもあり、東京から地方へ出て行く人もいる。多種多様が実勢なわけで、そこにあるのは、住みやすさや生活ニーズを求めての自由な人の移動のようです。”東京一極集中”といった単純な構図ではないようですね。


門前仲町や東陽町の一帯には、行列ができるほど安くて、おいしくて、家庭的なサービスを提供してくれる飲食店も数多く集積している。……(中略)……ステータスを度外視して都心の周辺にまで目を向ければ、高所得ではなくても都心ライフ同様のメリットを満喫できる場所が、じつはたくさんある。そう人々が気づいた時、限られた人たちだけに許されていた新たなライフスタイルの実践を可能とする選択肢が大きく広がることになった。台東区や江東区の内陸部で始まり出したこの動きを、「下町ライフ」と言ってもいい。見栄を張らずに実利を優先するのは下町のDNAそのものだからだ。

都心回帰という現象が少し前から始まりましたが、門前仲町や東陽町といった江東区や、あと台東区といった下町ライフを求めての人の移住が大きく、単純にリッチな人がなんとかヒルズなどのリッチな場所へ移っているのではないのだということ...


西部山の手地区の住宅開発を先導した鉄道会社や地元自治体などによる取り組みは、理想のまちづくりを実現しようという高い理念に支えられていた。しかし、周辺の小規模な開発まで、その理想を徹底させることはできなかった。
商品である住宅の敷地は然るべき規模が確保されたが、道路は曲がりくねったかつての畦道をそのまま再利用した。世田谷名物の一方通行路はこうして生まれたものだ。……(中略)……一方、埋め立て造成という土木工事が必要だった東部地区の住宅地開発では、道路や公園の整備が公的に担保される形で進んだ。

機能性に劣ると言わざるを得ない商店街が現役で残り続けている背景には、地元の人たちが商店街に地域ネットワークの結節点という価値を見出し、評価している思いがあるからにほかならない。世田谷区は、小田急線、京王線、田園都市線の駅前に、まさに各駅停車で活力みなぎる駅前商店街が並ぶ。

憧れの場所のイメージのある西部山の手地区は意外と生活インフラ(とくに道路や公園)などが貧弱で、むしろ低湿地が多かった東部下町地区のほうが計画的に整備されたというのが歴史的事実。東部下町には激安スーパーも多く、一方、西部山の手地区は零細な商店が並ぶ商店街が多いとのこと。


下町・東部地区には「ご近所パワー」という頼もしい子育ての味方が存在する。

江戸川区は、3世代同居世帯の割合が2位、ひとり暮らし高齢者の割合が低いほうから3位、25〜44歳の未婚率は最低。23区の中でもピカ一の「家族力」を誇る。

江戸川区で「家族力」がまちのDNAとして共有されていることを象徴しているのが保育ママの活躍である。保育ママは保育施設の整備が遅れる中で、一種の弥縫策として登場してきた。

保育ママは、2010年には「児童福祉法」の中に位置づけられ、2015年以降は地域型保育事業のひとつとして認可保育サービスの中に組み込まれるようになる。江戸川区の他にも、足立区、板橋区、練馬区、荒川区、大田区、世田谷区、墨田区、葛飾区など、下町・東部地区を中心に保育ママの存在が子育て支援の重要な戦力となっている。

東部下町地区では子供を守り育てる文化が今でも生きており、家庭を持つなら西部山の手地区よりも東部下町地区のようです。

他にもいろいろと参考になる情報がてんこ盛りです。

ぜひ一読をおススメしたいと思います。






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2020年08月04日

法律系マンガ『カバチタレ3』第28巻を読みました

マンガ『カバチタレ3』第28巻を読みました。

このブログでも過去に何回か取り上げているリーガル系の漫画です。

カバチ!!! −カバチタレ!3−(28) (モーニングコミックス) - 田島隆, 東風孝広
カバチ!!! −カバチタレ!3−(28) (モーニングコミックス) - 田島隆, 東風孝広

この漫画シリーズの良きところは、1巻ごとに物語が完結してくれることです。続きを心配する必要がないのがありがたい...

今回の事件は、ふざけた大学生がアルバイト先の引っ越し業者の作業のなかで引っ越し者のプライバシーをスマホで撮影してそれをアップロードしたこと。

それで炎上して、各所に迷惑をかけ、引っ越し業者の顧問である行政書士が問題の解決に乗り出すというストーリーです。

法律上は因果関係の証明が難しく、加害者(大学生アルバイトたち)を訴えるどころか、警察もまともに取り上げない始末...

そんな中、行政書士たちは、大学側に訴えるという線で話しをまとめていきます。

結果、やっぱり、”正義は勝つ”ということで落着。

教訓としては、過ちを犯す側からの視点としては、「法律に触れないから大丈夫」ないし「法律では裁くのが難しいから大丈夫だ」などと思ってはならないということ。

所属する組織のルールや組織の利益を守るという観点から、組織内規約によって裁かれる恐れがあるということ。

被害者側の視点としては、法的に訴えることはできない、ないし、困難であっても、ある程度の確証をもって加害者が属する組織の責任者へ話をもっていけば、民事的な交渉によって有利に問題が解決する可能性があること。

この2点でしょうか、第28巻が語ることとしては...

電子書籍化されていますし、お家のなかで読むリーガル系のエンターテインメントとしてすぐれものです。

おススメの一冊でございます。






posted by スイス鉄道のように at 07:00| 東京 🌁| Comment(0) | 気づき・ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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